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申し入れ・要望

《「消費者行政一元化」に関する意見〜「新しい組織」の設置を強く求めます〜》
2008年2月7日


 主婦連合会は1948年(昭和23年)の発足以降60年間にわたり、消費者行政を一元的に管轄する「消費者省」もしくは「消費者庁」の設置を求めてきました。この要求は、主婦連合会に限らず、消費者の権利実現を目指す全ての消費者団体の総意として提起されるもので、消費者共通の課題として位置付けられます。

 主婦連合会は、消費者問題がますます深刻化している現状を鑑み、今こそ「消費者行政の一元化が必要」と訴えます。2000年の省庁再編時に「縦割り行政の弊害の除去」が謳われ、また、2004年には「消費者基本法」が施行されて「消費者の権利の尊重」が国の責務に規定されたものの、なお、縦割り行政は温存され、消費者政策遂行の阻害要因となっています。消費者被害が深刻化する中、「消費者行政の一元化」は緊急の課題です。改めて主婦連合会は「一元化」へ向けた実効性ある新たな行政機関として「新しい組織」の設置を強く求めます。


1)「新しい組織」の必要性

 21世紀に入り省庁再編が取り組まれました。また、「消費者の権利」を盛り込んだ「消費者基本法」が制定されました。しかし、以降も消費者問題は深刻化し、製品・商品の安全性、表示問題、契約問題など、身近な生活分野で重大事件が頻発しています。表示に関する企業不祥事をはじめ、悪質事業者による高額被害発生も顕著となり、被害の防止・救済に寄与する実効性ある消費者政策の取り組み体制の整備が急がれるようになりました。

 最近の消費者被害の深刻化、契約被害の高額化については、その一義的責任は、事業者および事業者団体にあります。しかし、大規模・広域にわたり、被害・問題が頻発し、継続して発生している現状は、それを未然に防止できない、あるいは見過ごしている行政機関の遅れた対応を示すものとして懸念される事態です。行政機関の政策的欠陥を指摘する意見・疑問が消費者の間に渦巻いているのも十分に根拠があることです。

 規制緩和が推進される中では、事前規制から事後規制への政策転換が大前提となり、被害の拡大防止と救済へ向けた消費者行政の充実が、より求められてきます。しかし、現状は十分な事後規制策が採られないばかりか、縦割り行政によって、不適正な企業行為への事後的チェック機能すら発揮されていないのが実態です。消費者・生活者の視点よりも、事業者の視点が優先され、「消費者の権利」よりも「事業者の利益」が重視される、そのような「安全・安心」とはかけ離れた施策が遂行されているのが現状です。消費者基本法が制定されて後も、複雑・深刻化している消費者問題に十分な対応体制が整備されていない点に事態の重大性があります。

 「新しい組織」の必要性は、責任のあいまいな縦割り行政を排し、消費者問題を一元的に担う新しい機関の創設として極めて重要です。主婦連合会は、消費者被害の防止・救済を図り、消費者権利を尊重する施策遂行を目的とし、その目的達成へ向けての権限を有する「新しい組織」が必要と考えます。


2)縦割り行政の弊害

 食品業界の相次ぐ表示偽装事件、住宅建材の偽造サンプル事件、衣料・日用品をめぐる原産地偽装、全国110万件におよぶ深刻トラブルなど、「衣食住」全ての分野で企業の悪質行為や反消費者的行為が続発しています。企業の対応遅れだけではなく、輸入冷凍ギョーザ事件に示されるように、事故情報の一元的収集・提供が不備なために、公表遅れにつながり、結果的に被害拡大・消費者不信を招いた行政対応も問題視されています。

 政府は、生活安心プロジェクトを発動させ、従来の施策の総点検と、その見直しへ向けた検討に取り組んでいます。しかし、一つ一つの見直しが各省庁の「省益」を重視した整合性のない対症療法策として実施されるなら、いっそう多くの課題を先送りすることにつながり、消費者の信頼回復に寄与しないことは、これまでの消費者政策の歴史を見ても明らかです。施策は縦割りであっても、私たちの消費生活は縦割りではありません。

 実際は、現在の消費者行政は、各省庁が製品・サービス分野、業界・業態分野別にそれぞれ管轄する「縦割り体制」を特徴としています。製品・サービスごとに所管省庁が存在し、それぞれの産業分野を業法で管轄する仕組みとなっています。この仕組みは、これまでの生産重視の産業育成の観点からは確かに有効なシステムだったと言えます。

 しかし、その一方、この行政の仕組みは、消費者の視点よりも生産・企業の視点からの政策立案・遂行を促し、結果的に消費者保護に敵対・消極的とならざるを得ない構造を有しています。消費者基本法は消費者政策の推進へ向け、国の責務として「消費者の権利の尊重」「消費者の自立支援」を規定していますが、現状の縦割り体制はこの消費者政策遂行に大きな障害となっています。実際上も、権限のない内閣府が消費者行政の調整役を担いつつ、事業者規制の権限を持つ監督官庁が消費者政策を実施する構造となっており、結果として消費者政策が十分展開されず、生産重視策とならざるを得ないものです。「生産重視から生活者・消費者重視へ」と消費者政策を推進させていくには、まずもって、この縦割り行政体制を根本から転換させ、真に消費者行政を展開させる環境を整備する構造的改革が必要です。そのための緊急を要する不可欠な改革こそ「消費者行政の一元化」です。

 現状では、消費者行政が縦割りとなっていることで、次のような深刻な消費者問題が発生しています。以下はその一例に過ぎません。


3)確保されない安全性

 総合的事故防止策が採用されず、安全性対応が官庁間でバラバラです。

 身の回りの製品・商品の事故の未然防止・拡大防止のためには、少なくとも、消費者に関連するすべての製品・商品に関する「事故情報の報告義務」「事故情報の社会的共有化」「リコール社告の改善」が必要となります。昨年5月に改正消費生活用製品安全法が施行され、事故情報の報告義務・公表制度が導入されましたが、これは「消費生活用製品」を対象としたものであり、こんにゃくゼリーや健康食品など食品分野には適用されません。こんにゃくゼリーで死亡事故が起きても事業者には報告義務はありません。輸入冷凍ギョーザ事件でも事故を把握した段階で速やかな報告が必要で、報告と同時に「公表」が求められていたはずです。「事故情報の社会的共有化」の核心は、消費者に正確に事故情報が伝わることですが、この措置が一向に進展していません。消費者の身近な製品。商品による事故であっても法的管轄の違いで情報を収集する機関が異なります。経産省、国交省、厚労省、農水省、内閣府、消防庁など、管轄官庁によって公表体制も異なっています。「リコール社告の改善」にしても、工業製品に関してはJIS化の動きがある一方、JISの対象外となる食品分野の規格化は進んでいません。このように、製品・商品ごとに縦割り行政であることから、事故防止策についても製品・商品ごとに整合性が保てていないのが現状です。

 輸入冷凍ギョーザ事件では、警察・厚労省・農水省および各地自治体が関与していますが、なぜ、公表が遅れたのか、大きな疑問がもたれています。また、デスクマットに使用する化学成分の管轄は本来、厚労省ですが、経済省に皮膚炎の事故情報が寄せられ、その結果、危険性が公表されました。おもちゃの安全性確保についても経産省・厚労省など所管官庁が異なることから、事故関連情報の収集・提供(公表)にあたっては縦割りの弊害が指摘されます。

 主婦連合会は事故関連情報の収集・提供をはじめ、事故の未然・拡大防止策を一元的に管轄する「事故防止センター」(仮称)の設置をずっと要求してきました。消費者行政の一元化はこの「事故防止センター」の機能をも併せ持つことが必要と考えます。


4)消費者に適正に届かない表示

 現状は、製品・商品の注意喚起表示を含む表示の規制に整合性がありません。食品の表示は、JAS法、景品表示法、食品衛生法、不正競争防止法、計量法など、いくつかの法律で規制されていますが、昨年の偽装表示問題では、これら法律が違反の未然・再発防止、さらに消費者被害の防止・救済へ向け、実効性ある機能を有しているのかどうか、重大な疑問が提起されることとなりました。

 アルコール飲料を例にしても、管轄は国税庁、厚労省、公取委、警察庁と多岐にわたっており、それぞれが管轄法に基づき縦割りで規制しています。未成年者飲酒、妊産婦飲酒への警告表示も所管庁が異なることから、実効性ある政策が採られていません。低アルコール飲料の容器の図柄を見ても、清涼飲料水には厳しい基準がありますが、品名が「酒類」(アルコール分1%以上)となったとたん、緩やかな業界団体の自主基準となります。

 誤認表示については公取委(景表法)のほかに、経産省(特商法)や厚労省(栄養改善法)などでも所管しています。その結果、罰則や再発防止策にアンバランスが生じています。景表法では今国会で課徴金を課す法改正が予定されていますが、現在までのところ、「不当利得の吐き出し制度」の導入には至っていません。事業者は「売り得」ですが、消費者は「買い損」のままという状態に置かれています。


5)取引分野も「売り得・買い損」、遅れる被害救済

 縦割り行政の弊害は消費者取引分野でも顕著となっています。クレジット契約や特定商取引は経産省、消費者金融(サラ金)や金融商品トラブルは金融庁、商品先物は経産省と農水省、さらに詐欺的商法は警察庁、と契約内容や商品分野別に管轄官庁が異なっています。それによって救済制度にも相違が生じ、消費者トラブルの解決の困難さが指摘されます。

 介護保険制度に関する消費者被害も同様です。介護の契約問題には消費者契約法が適用されますが、介護サービスの「質」や、施設内の事故については自治体の所管部署および厚労省が管轄しています。介護サービスは本来消費者にとっては、契約からサービス提供までは区別のできない一連の経緯ですが、それが行政対応では分断されています。各地の自治体では消費生活センターに寄せられた介護の苦情相談を他の部署と連携して取り組むところが多く、今後、高齢社会進展へ向け、一元化が大きな課題になると指摘されます。

 以上の例でも推測されるように、「消費者行政の一元化」は、少なくとも、「安全性」「表示」「消費者取引(契約)」の3つの分野を網羅することが求められます。消費生活で最も肝心な重要点であるためです。当然、安全性が確保されずに被害が発生した場合や、表示が不備な場合、さらに不当な取引で被害を受けた場合の「消費者被害救済」措置も「一元化」には含まれます。英会話教室大手「NOVA」との解約交渉が各地消費生活センターで困難となった理由の一つとして、2002年に経産省がNOVAの解約条項を「合理性が認められないとは言えない」と各地センターに示したことを挙げるセンターが多いことが昨年8月、国民生活センターの調査でわかりました。センターの相談窓口で問題視されながら、結果的に業法の管轄官庁がNOVAに「お墨付き」を与え、トラブルが全国で深刻化していったことが推測されます。全国での消費者苦情相談が110万件の高水準を維持している1つの要因も、消費者行政の縦割り対応にあることを指摘しておきたいと思います。


6)「新しい組織」の機能と組織の条件

 では、「新しい組織」とはどのような機能を有し、どのような組織形態を特徴とすべきでしょうか。消費者運動の経験の中から提起すると以下のようになります。

 消費者行政を一元的に担う新たな組織は、消費者の権利を尊重し、権利実現へ向けた消費者の行動を支援する機能・権限を有していることが前提となります。そのために、事後規制のみならず、事前規制に関する一部権限を付与されることが必要で、「救済される権利」についてもそれを支援する専門機関を新組織に配置されていることが求められます。

 具体的には、権利実現を求める消費者の行動を尊重し、消費者政策の企画・立案のみならず、その実行・執行も遂行できる機関であり、企画・立案・実行(執行)・評価に際して、十分な透明性が確保されていることが前提となります。その条件を列挙すると次の通りです。

(1)消費者基本法に盛り込まれた「消費者の権利」を尊重し、消費者政策を遂行するにあたっての権限を持ち、それを一元的に担う独立機関

(2)政策の実効性を確保するために「企画」「立案」「実行・執行」を担う独立機関

(3)消費生活に密接に関連する「安全」「表示」「消費者取引(契約)」を管轄範囲に含めた独立機関

(4)(3)の機能に伴い、自らの被害救済を求める消費者に対し、その被害の救済を支援・遂行するシステム及び権限を持った独立機関

(5)消費者政策の企画・立案にあたっては消費者参加を保証し、実行・執行については消費者を含めた第三者機関による評価を保証した機関

(6)自治体消費者行政との連携を図り、役割分担の中、機動的な対応を保証した機関

 新組織が有する権限には、立入調査や文書・資料の提出命令ができる十分な調査権限、事業者への改善・排除・業務停止などに関する指示・勧告・命令が出せる権限、他省庁(官庁)への対応改善を要求できる勧告権限などが付与されることが必要です。

 「新しい組織」はこのように、現在のような、内閣府国民生活局が調整役を担いつつ、各省庁が業法によって管轄内で執行するという「縦割りシステム」を再編し、「安全」「表示」「消費者取引(契約)」分野を管轄しつつ、消費者被害救済策も担うという機能を併せ持つことが必要です。そのために、新組織の創設は、各省庁に付与された執行分野についても総合的に見直すという「省庁再編」を伴う改革となります。

 主婦連合会では、60年の消費者運動の経緯・教訓を踏まえ、海外の消費者行政の成果・教訓を視野に入れながら、新組織設置にあたっては、幅広い議論と、消費者参加による十分な検討が必要と考えます。消費者の権利を実現させる主体は何よりも消費者一人一人にあります。「新しい組織」は、そのような権利実現を求める一人一人の消費者の行動を支援・尊重する新機関として、検討の前提に位置付けられることを強く求めます。

以上

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