【要望書】《酒類のキャラクター商法と車体広告の規制及び酒類販売への包括的な社会規制を求める要望書》

《酒類のキャラクター商法と車体広告の規制及び酒類販売への包括的な社会規制を求める要望書》
2003年9月30日

《国税庁長官 寺澤辰麿・厚生労働大臣 坂口 力  宛》

 

1)キャラクター商法について
サッポロビールでは、発泡酒「生絞り」のマスコット・キャラクターとして、「ドン・シボリオーネ」「シボリーナ」などを開発し、景品や広告(車体広告も含め)に積極的に展開しています。景品には、ピンク色の弁当箱やお手ふきなどを組み合わせた行楽セットや、ハンドパペット型のボディタオルなど、子どもが「かわいい」と欲しがりそうなものがあり、これが酒類の景品かと目を疑う状況です。

これは明らかにキャラクター商法で、1980年代前半にブームとなったサントリーのペンギンやタコを想起させます。かわいいキャラクターは子どもへのアピール力が強いため、メーカーがそれを意図していなくても、子どもたちに浸透してしまうという重大な問題性を持っています。マスコット・キャラクターを通して酒類が身近なものになってしまうのです。当時、このキャラクター商法に社会的批判が集まり、以来、酒類メーカーはあえてマスコット・キャラクターを展開した販売戦略はとらなくなりました。その不文律が今回、サッポロビールによって破られたのは、非常に残念です。同社のキャラクター商法が許されるということになれば、他社もこぞってこの手法に手を出し、かわいい酒類キャラクターが氾濫するという異様な事態にもなりかねません。

しかし、同社は今のところ、マスコット・キャラクターの使用をやめるつもりはないとの回答をよこしています。

2)車体広告について
サッポロビールは現在、山手線で「生絞り」の車体広告を行なっていますが、これも酒類メーカーとしての社会的配慮に欠ける行為です。車体広告は強制力・インパクトが非常に強い広告媒体で、乗車しようとホームで待っている人々の目に否が応でも飛び込みます。そして、乗客はその車体に乗り込まなくてはいけません。乗客の中には、通学途中の小・中・高生もいれば、飲酒してはいけない人、飲酒したくない人もいます。「飲酒は20歳になってから」と記載すれば事足りるというものではありません。

 1994年、ニッカウヰスキーが東急電鉄で「全車両貸切広告」を実施したことがありましたが、抗議によって中止になりました。(日本酒造組合中央会/日本ワイナリー協会/ビール酒造組合/日本蒸留酒酒造組合/国税庁酒税課にも、全車両貸切広告自粛を申し入れました)

 1999年にはアサヒビールが西武線の「自動改札機へのステッカー広告」を行ない、同様の抗議によって撤去。また、同じくアサヒビールが都営地下鉄浅草線・新宿線で「ウインドウビジョン(車窓)広告」を行ないましたが、これも継続中止になっています。

 

酒類は、未成年者飲酒をはじめ、さまざまな健康問題・事故・社会問題を引き起こす可能性のある致酔性・依存性の飲料です。だからこそ、世界中の先進国が酒類に一定の社会規制(広告への法的規制・自主規制・自販機の禁止など)を設けています。テレビCMはもちろん、ビルの看板さえ禁じている国が数多くあります。酒類メーカーには、社会的配慮のもとに事業活動を行なう責任があるのです。どんな販売促進を行なってもいいというものではありません。

上記(1)(2)の販促手段は、致酔性・依存性の飲料である酒類に対しての社会的配慮を欠いたものであり、私たちはとうていこれを看過することはできません。

酒販免許が自由化され、アルコール問題についてきちんとした認識を持たない異業種が続々と販売に乗り出しています。一方で、未成年者の飲酒問題に対し、関連省庁が連携して対策に取り組んでいますが、このような状況の中では効果は限定的です。日本でも、包括的な社会規制を検討する時期にきているのではないでしょうか。

つきましては、以下の項目に関して早急な対応をお願いしたく、ここに強く要望します。

1)酒類のマスコット・キャラクターの使用を中止するよう求めること

2)酒類の車体広告を中止するよう求めること

3)酒類の広告及び販売方法に対する包括的な法的規制の整備

以上

※日本アルコール問題連絡協議会 加盟団体:
特定非営利活動法人ASK(アルコール薬物問題全国市民協会)/イッキ飲み防止連絡協議会/アディクション問題を考える会(AKK)/(社)全日本断酒連盟/ 日本アルコール・薬物医学会/日本アルコール関連問題ソーシャルワーカー協会/日本禁酒同盟 /日本キリスト教婦人矯風会/日本禁酒禁煙協会/救世軍日本本営