【意見書】《神戸製鋼、日産自動車等の安全軽視の不正行為について行政施策の観点からの原因究明と再発防止策を求めます》

2017年11月17日

内閣総理大臣
経済産業大臣
国土交通大臣
消費者担当大臣
消費者庁長官
消費者委員会委員長 宛

神戸製鋼、日産自動車等の安全軽視の不正行為について行政施策の観点からの原因究明と再発防止策を求めます

主婦連合会

神戸製鋼の品質検査データ偽装、日産自動車等の無資格検査など、日本を代表する大企業による、極めて悪質で深刻な不正行為により、消費者の信頼は失墜しました。公表されてひと月余り経過する今も、全容解明には至っていません。消費者の身体生命の安全に密接に関わる部門における長年の不正行為に対して、うわべだけでない真の原因究明と抜本的再発防止策の策定、実施を求めるものです。

JIS認証制度でなぜ長年見抜けなかったのか
神戸製鋼の製品データ改ざん問題では、子会社の銅管製品のJISの認定が取り消される事態となっています。今後更に製品の範囲が広がる可能性も指摘されているところです。長年にわたるデータ改ざんが、JISの認証制度の下で、なぜもっと早期の段階で発見され、是正できなかったのでしょうか。
認証制度の信頼性確保のため、国は、登録認証機関に対し定期的な登録の更新手続に加え、報告聴取、立入検査等の維持管理を行い、必要に応じて、適合命令、改善命令、登録取消し等の措置を行うとされていますが、これが実質機能していなかったことは極めて残念です。神戸製鋼の製品は消費者の身体生命に直に関わる、自動車、鉄道、航空機、そして原子力発電所にまで広く使われています。神戸製鋼という企業のコンプライアンス意識に大きな問題があり、企業として抜本的再発防止策を整えることは当然のことですが、それだけではなく、JISの認証制度の信頼性維持について実効性を高めることもまた強く求められます。

自動車の完成検査の信頼性回復のために抜本的見直しを
自動車製造における完成検査は、本来は国が行うべきところ、「型式認証制度」に基づいて企業内の有資格者が代わりに行うもので、自動車の安全確保の「最後の砦」とも言われています。今回の日産自動車の無資格検査問題についての調査過程では、資格試験においても数々の不正があったという証言が出ています。日産自動車等が徹底的な原因究明を行い、抜本的再発防止策を整え、有資格者が完成検査をすることは当然のことですが、本質的な問題は完成検査の質の確保にあるはずです。完成検査に求められる技量とは何か、それが確実に備わっている者が検査することをどうしたら担保できるのか、型式認証制度の本質からの見直し、引き締めが求められます。

公益通報者保護法の実効性確保のための改正を
今回の一連の不正行為の発生のきっかけおよびそれが放置されてきた事情は、必ずしも明らかになっていませんが、長年にわたって不正行為が続けられてきた背景には、不正に疑問を持つ良識ある社員が是正のための声を上げられなかったか、上げても機能しなかったことが推察されます。本来であれば公益通報者保護法がこうした社員を保護し、安心して不正是正のための声を上げることができなければならないはずですが、残念ながら現在の公益通報者保護法では通報者の安心の担保になっていません。
今こそ、公益通報者保護法の目的である企業等の不祥事の予防・是正につながるよう、同法の抜本的改正を求めます。

消費者庁創設の背景と理念を今一度思い起こしてください
2009年に消費者庁が創設される大きなきっかけとなったのは、2000年代になって次々と起こった表示偽装事件や製品事故への反省でした。当時の自民党政権、福田康夫総理の強いリーダーシップのもと、安全安心な市場を作ることを最優先にする社会を目指す目標が提示されました。2008年6月に閣議決定された消費者行政推進基本計画には以下の記述があります。

―今や「安全安心な市場」、「良質な市場」の実現こそが新たな公共的目標として位置付けられるべきものとなったのである。それは競争の質を高め、消費者、事業者双方にとって長期的な利益をもたらす唯一の道である。―

パラダイムの転換はいまだ起こっていません。それどころか安全安心最優先の理念が、日本を代表する企業の現場で蝕まれ続けてきたことが今回、白日の下になりました。
企業内で不正行為が是正されない背景に、経済効率最優先の国の政策姿勢の影響を無視することはできません。今一度、消費者庁創設のときの政策理念の本質を見つめなおし、安全安心な市場を構築しなおし、消費者の信頼が回復されることを強く望みます。

以上