緊急提言「非感染性疾患対策の推進のため、健康の商業的決定要因としてのアルコール飲料入手規制に政治的リーダーシップを発揮すべき」

2025年5月
特定非営利活動法人 日本医療政策機構

日本医療政策機構(HGPI 非感染性疾患(NCDs)対策推進プロジェクト
2025年「第4回 非感染性疾患 NCDs: Non-communicable Diseases と
メンタルヘルスに関する国連ハイレベル会合」に向けた緊急提言
非感染性疾患対策の推進のため、健康の商業的決定要因としての
アルコール飲料入手規制に政治的リーダーシップを発揮すべき

 

提言1:アルコール 飲料入手規制 に関して国際的なリーダーシップを発揮すべき
NCDs対策としてのアルコール健康障害対策は世界共通の課題であり、特に低中所得国においてアルコール産業がもたらす健康への被害は甚大であることから、国際的な連携と協調を強化し、抜本的な解決に向けた国際的な枠組みの構築が必要です。
第4回NCDsとメンタルヘルスに関する 国連ハイレベル会合においても、NCDsおよびメンタルヘルスの重要な予防手段であるアルコール飲料規制について、日本が各国政府へのコミットメントおよびアカウンタビリティ強化を呼びかける等、国際的なリーダーシップをとることを期待します。 日本は、これまでもアジア・太平洋地域の中で発展した医療制度と公衆衛生インフラを有する国の一つとして、医療システムの強化やUHC強化に基づくプライマリ―ヘルスケアの重要性を訴え、国際的、地域において重要な役割を果たしてきました。そのため、今回の国連ハイレベル会合においても、引き続きグローバルヘルス領域における健康増進に貢献し、さらには、採択される政治宣言が1加盟国である日本の国内政策を強化する根拠として機能し国内の制度整備をはじめとする政策実装を促すことを期待します。

 

提言2:アルコール起因の健康課題を持つ患者・当事者の声を 中心にした政策を推進すべき
WHOの「ベストバイ」政策実施においても、政策の社会的受容性と持続可能性を高めるための重要な要素として、当事者参画型の意思決定プロセスが強調されています。日本のアルコール健康障害対策基本法の成立過程においては患者・当事者団体や市民団体、関係学会を中心に「アルコール健康障害対策基本法推進ネットワーク」が結成され、超党派アルコール問題議員連盟とともに活動することで法案が成立しました。

その後、基本法に基づきアルコール健康障害対策関係者会議でマルチステークホルダーによる議論が行われていますが、これまでの取り組みをより強化し、NCDs対策を推進するためには、患者・当事者の声を十分に政策決定プロセスに含められるような仕組みづくりとともに、多様な利害の下でも患者・当事者、そして市民の健康を増進するという共通の目的の元で議論すべきです。

 

提言3:省庁横断・分野横断でのアルコール飲料入手規制を強化し、NCDs対策を推進すべき
日本におけるアルコール飲料入手 規制は現状十分とはいえず、その背景には、アルコール産業の影響力、酒税収入、広告業や小売業等の他業種利益が存在していることに加え 、アルコール飲料が地方伝統に深く根づいた食文化としての一面も有している ことが挙げられます。また、各省庁の異なる立場や目的から、アルコールによる健康障害対策が必ずしも包括的に推進されていない状況も指摘されます。
しかし、アルコールに起因する健康被害の重大さを踏まえると、日本国内のアルコール飲料入手規制の在り方を検討する段階にきており、NCDsの患者・当事者の声を中心に据えた、省庁横断かつ分野横断的に、多面的な視点・立場から検討されるべきです。健康関連施策を所管する 厚生労働省のみならず、内閣府、法務省、警察庁、国土交通省、子ども家庭庁、財務省、経済産業省、文部科学省、消費者庁など複数の省庁に関連する政策課題であることから、省庁横断的な協議、ならびに分野横断的な議論に基づいて、NCDs対策としてのアルコール飲料入手規制を強化する必要があります。

以上