【要望書】《原子力発電不祥事に関する申し入れ》

《原子力発電不祥事に関する申し入れ》
2002年10月1日

《経済産業大臣 平沼 赳夫 原子力安全・保安院長 佐々木 宜彦  宛》

 

原子力安全・保安院は去る8月29日、東京電力による原子力発電所事業者の自主点検作業記録に係る不正等に関する調査を公表されましたが、これは、電力会社及び原子力行政に対する国民の信頼を根底から覆すものでした。東京電力の経営陣が責任を取って辞任したのをはじめ、内部調査に基づく関係者の処分を発表した後にも、東北電力、四国電力、中部電力等の損傷隠しが明らかになり、業界全体に関わる問題となっています。

このような不祥事は、安全問題はもとより、日本のエネルギー政策の根幹に関わります。

原子力安全・保安院は、二年間にも渡り、内部告発を見送るなど事故を隠蔽し、安全チェック機関としての役割を果たしていなかったことが明白になりました。9月26日の新聞報道によれば、第三者機関による事故隠しの全容の徹底的な究明を行うことなく、運転可能な原発損傷の目安を示す「欠陥評価法」の導入や自主点検の法定化、罰則強化などを盛り込んだ再発防止策をまとめられました。しかし、その内容は安全基準を緩和するなど、安全確保とは逆の方向を取ろうとしています。

また、今回の不祥事が明らかになったのは、JCOの臨界事故をきっかけに、原子炉等規正法の改正により、いわゆる「内部告発者保護」が図られるようになったことが大きいといわれています。

行政、企業等のルール違反や安全に関わる問題等は、企業に働く従業員が一番早く知り得るわけですから、内部告発者保護は社会の安定、安全確保にとって必要な制度です。今回の原子力安全・保安院の内部告発者保護への配慮の欠如等は企業の信頼性を確保する上でも、到底見過ごせない問題です。

原子力安全・保安院及び経済産業省においては、今回の原子力発電所損傷隠しの深刻な状況を踏まえて、日本のエネルギー政策を抜本的に見直すよう求めます。