2009年7月30日
国税庁長官
厚生労働大臣
内閣府特命担当大臣 宛
テレビのアルコールCMの規制強化に関する要望書
日本アルコール問題連絡協議会
*特定非営利活動法人アスク
アルコール薬物問題全国市民協会
日本アルコール関連問題学会
日本アルコール精神医学会
主婦連合会
日本のアルコールCMの現状をふまえ、別紙の申し入れを「酒類の広告審査委員会」および酒類業団体に対して行ないました。この問題は、酒類団体の努力だけでは解決ができません。早期の改善を図るため、関連省庁が一体となり、以下の対策を推進されるよう、要望します。
<要望項目>
1 アルコールCMの自主基準の強化と法規制の検討
?欧米の国々の多くがアルコールCMを規制する何らかの法律を持っています。法規制を持たないといわれるイギリスでも、酒類メーカーとメディアが合意した「英国広告コード」を持っています。アメリカでも蒸留酒はCM禁止、ビール協会は飲酒場面を禁じるなど、厳しい自主規制コードを持っています。
日本にも、酒類業中央8団体で構成される「飲酒に関する連絡協議会」が策定した「酒類の広告・宣伝及び酒類容器の表示に関する自主基準」がありますが、その内容は世界基準には程遠く、日本の消費者は世界的には許容されないCMに日々さらされるという、憂うべき状況に置かれています。
日本の自主基準を強化し、世界的なレベルに近づけることが急務です。
?しかしここに大きな問題があります。協議会に属していない企業(例:JINRO 韓国焼酎の輸入会社であるため、属すべき組合を持たない)は、基準の枠から漏れてしまうのです。自主基準の遵守状況を審議するために作られた「酒類の広告審査委員会」も、「飲酒に関する連絡協議会」に属していない企業に対しては、審議結果を伝えるルートを持ちません。
まさに「すき間」の空白地帯が存在しており、アルコールによる健康被害の増長を考えると早急な法規制の検討が必要です。この間の「消費者庁設置」へ向けた検討の中でも、「すき間事案」への対応が重大な課題となっておりました。日本で広告・宣伝・販売活動を行なうすべての酒類企業を網羅するためには、現状の自主基準の形態とは別の「法的な規制」が必要です。
2 日本のCM問題についてのWHOへの報告
WHOは2010年5月までに「アルコール問題削減戦略」をまとめる予定です。今回のASKによる広範囲なCM調査では、日本の現行のCMのあり方が国際的なアルコールによる健康被害に関する防止措置をほとんど考慮しておらず、むしろ、無視していると思えるケースさえあります。
日本のアルコールのCM規制は国際的に格段に遅れており、今後の健康被害への重大な懸念が指摘されます。このような日本のCM規制にまつわる議論を、WHOに報告してください。
3 事業者への適切・緊急な措置と消費者への啓発
私たちは、アルコールCMの実態を踏まえ、新たな法的規制の導入と自主基準の見直し、及びその強化が緊急課題であると考えます。それら措置を実効性あるものとするには、行政による事業者への適切・緊急な措置と、消費者啓発への積極的取り組みが重要です。
日本では、近年、女性の飲酒率が急増して20?30代では8割を超えており、中高生の飲酒行動に関する調査でも中学1年では女子が男子を上回るなど、女性の飲酒問題の広がりと深刻化が多くの専門家によって指摘されています。
ところが、大手メーカーのサイトに掲載されているCMを分析したASKの「アルコールCM調査2009」(別紙)によると、いまや女性は男性と同等かそれ以上の戦略的なターゲットにされていることが浮き彫りになりました。厚生労働省「健康日本21」では、「女性は男性よりも少ない量が適当」とされているのに、そのような配慮は、まったくありません。
妊産婦の飲酒のリスクに関する注意表示も、テレビCMには反映されていません。(参照: 日本たばこ協会の自主基準には、製品広告について「女性の喫煙ポーズを描写したものでないこと」という条項があります)行政におかれましても、酒類業界に対して、アルコールの害に対してハイリスクである女性に配慮するよう緊急に要請するとともに、国としても政府広報や母子保健行政などを通じて、女性への啓発に務められますよう要望します。
以上
【連盟】
日本アルコール問題連絡協議会、*特定非営利活動法人アスク(アルコール薬物問題全国市民協会、日本アルコール関連問題学会、日本アルコール精神医学会、主婦連合会
*特定非営利活動法人アスク
加盟団体:特定非営利活動法人ASK(アルコール薬物問題全国市民協会)/イッキ飲み防止連絡協議会/アディクション問題を考える会(AKK)/(社)全日本断酒連盟/日本アルコール・薬物医学会/日本アルコール関連問題ソーシャルワーカー協会/日本禁酒同盟/(財)日本キリスト教婦人矯風会/日本禁酒禁煙協会