2009年10月7日
文化庁長官
消費者担当大臣
消費者庁長官、
消費者委員会委員長 宛
アナログチューナー非登載DVD録画機器を私的録音録画補償金の対象機器とする件についての意見と要望
主婦連合会
先月8日、文化庁長官官房著作権課長名にて、アナログチューナー非登載DVD録画機器を私的録音録画補償金の対象機器とする旨の文書が、社団法人私的録音録画補償金管理協会からの照会に回答する形で、何の審議も経ずに出されたことは誠に遺憾です。
私的録音録画補償金制度は、抜本的な見直しのための審議が、平成18年から文化庁において続けられましたが、関係者間の意見の隔たりが大きく、見直しについて合意できていない問題であることは、本年1月に発表された文化審議会著作権分科会報告書においても明らかです。
その論点の中でも特に、地上デジタル放送からの私的録画が補償金の対象となるかどうかという点においては、今後の検討と合意形成が必要な事項として関係者間で明確に認識されています。
たとえば、平成20年6月、文部科学省、経済産業省の連名で出された「ダビング10の早期実施に向けた環境整備について」という文書では、ブルーレイディスクレコーダーを補償金の対象とするのは、それが「アナログチューナーを搭載しておりアナログ放送のデジタル録画が可能である」から、「暫定的な措置として」対象とするものであり、「無料デジタル放送の録画の取扱等私的録音録画補償金制度のあり方については、早期に合意が形成されるよう引き続き努力する」と記されています。
また本年5月22日付、文化庁次長名で関係者あてに送付された「著作権法施行令等の一部改正について(通知)」でも、ブルーレイディスクレコーダーの指定について同様の理由を述べ、さらに「両省は、このような現行の補償金制度が有する課題を十分に認識しており(中略)今後、関係者の意見の相違が顕在化する場合には、その取扱について検討し、政令の見直しを含む必要な措置を適切に講じること」と明記されています。
地上デジタル放送の録画に対する補償金についての主婦連合会の意見は以下の通りです。
■ 私的録画補償金は、著作権保護技術による複製制限のないアナログ放送のデジタル録画が無制限にできることを懸念して導入されたものである。
従って技術的に複製を厳しく制限されている無料デジタル放送は、補償金の対象とすべきではない。
■ 厳しく録画制限された地上デジタル放送を消費者が私的に複製することで、権利者に実質的な損害があるとは考えられない。
他方、消費者の側の損失(負担)は明らかに存在する。まったく録画をしない、録画機をもたない国民も含めて、著作権保護技術をエンフォースするためのスクランブル放送を受信しなくてはならず、テレビを買う場合には暗号化解除の仕組みを含めて、コスト負担を強いられている。
国の政策であるデジタル化によって、すべての国民がテレビを買い替えなければいけない中で、これらの技術は著作権者の権利を保護するためであるにもかかわらず、録画をしない消費者を含めて、最終消費者に負担のつけをまわしている。
消費者は、公共性が高い基幹放送である地上波のテレビ放送に世界で唯一複製制限技術が施されることで自由を制限され、それを実現するための複雑な仕様のためのコストを負担させられ、その上、私的録画補償金も課されるということは、消費者の権利の侵害であると考える。
多くの国民はこのことを知らずに支払わされている。
著作権者の権利保護と同時に、消費者の権利・利益の保護を考慮に入れて検討が進められなくてはならない。
本件は、文化庁、経済産業省、総務省という縦割り構造のなかでの「すき間事案」と捉えることができ、消費者庁・消費者委員会を含めもっと広く議論されるべきである。
以上のことに鑑み、本件について以下のことを要望いたします。
1. 無料デジタル放送の録画についての私的録音録画補償金制度の在り方については、消費者、権利者、メーカー等を含む、公平な人選のもと、透明性の確保された審議の場を設け、そこで引き続き合意をめざして議論すべきであり、早急にそのような議論の場を設定すること。
2. アナログチューナー非搭載DVD録画機器を補償金制度に関して政令指定機器であるとした文化庁長官官房著作権課長の回答は撤回し、議論の結論が出るまで本件は保留とすること。
以上