2019年9月4日
横浜市長 宛
カジノは必ずや横浜の負の遺産となります
民意を無視した横浜市のカジノ誘致表明を撤回してください
主婦連合会
主婦連合会は別紙の通り、これまで一貫してカジノ解禁、設置に反対してきました。各種世論調査でも常に過半数の市民がカジノに反対しています。
8月22日、林市長はカジノを含む統合型リゾート(IR)の誘致方針を表明されました。しかし、これは2017年の市長選に立候補された際に、カジノ誘致は白紙状態と述べた上で、「市民の皆様、市議会の皆様の意見を踏まえたうえで方向性を決定」と明記された公約に対する重大な違反行為であり、民意を完全に無視した判断です。市民生活に深刻な影響を与え、将来にわたる横浜市のありようを大きく左右する判断を、民意を置き去りにして決めていく林市長の市政運営に大きな失望を禁じ得ません。
カジノは数々の深刻なダメージを市民に、そして社会全体にもたらすものです。市長が掲げる経済効果も、諸外国の事例を丁寧に見れば期待できないことは明白です。
カジノ設置がもたらす弊害の代表的なものは、諸外国の事例から読み解くと主に次のようなものです。
- カジノ設置により既存の地元のレストラン、ホテル、会議場、娯楽施設、小売業に対する支出を減少させ、カジノ客増大の波及効果は期待できない。
- カジノからの税収より、依存症、犯罪、多重債務、家族崩壊などに対応する財政的負担が上回り、深刻な財政危機を招く。
- 強姦などの性犯罪、強盗、暴力的犯罪がカジノ開設後5年で10%増大すると言われている。
- 地域内のギャンブル依存症患者が倍増する。
- ギャンブル依存症の人の自殺率は通常の5倍から10倍。依存症の家族の 自殺率も高いと言われている。
- ギャンブル依存者の子供の非行率は極めて高い。
このようにカジノは家庭を壊し、地域社会を壊し、社会的コストも増大し、わたしたちの社会を深刻に傷つけるものです。カジノは横浜のみならず日本のどこにも必要ありません。
誘致撤回もしくは民意を問う手続きを
市長はカジノ誘致を持続可能な横浜経済を構築するためと述べています。私たちは経済効果そのものが画餅と考えていますが、仮に一定の経済効果があったとしても、将来の横浜の風景の中に見えるのが安心安全に家庭生活を営む幸せな市民の姿でないなら、なんのための誰のための将来構想でしょうか。建設時の一時的経済効果の時期が過ぎ去ったあと、カジノ賭博場は必ず横浜の負の遺産となります。
私たちは「市民の意見を踏まえたうえで方向性を決定」と明記した2年前の公約に違反するカジノ誘致表明の撤回を強く求めます。その上で、尚カジノ推進という立場をとられるのなら、必ずその是非を住民投票にかける、あるいは、一旦市長を辞職された上でカジノ誘致を正面から掲げて出直し選挙に臨み、市民の審判に付すべきです。
公約違反の市長の失策で横浜の将来を台無しにすることなど許されません。私たちはカジノ誘致に断固反対します。
以上
*別紙に、主婦連合会がこれまで意見表明してきた、カジノ設置反対の理由の詳細版を添付します。
別紙
主婦連合会がカジノ設置に反対する理由
政治は市民の幸福のために~カジノは市民を幸福にしない
カジノは暴力団等のマネーロンダリングに利用されるなど、設置地域の治安悪化につながり、犯罪を増加させます。ギャンブル依存症により本人のみならず家族の心も蝕み、自殺率も高くなります。依存症対策をギャンブルからの利益で行うのは本末転倒です。
カジノ推進派の方々はカジノの設置により「地域経済の振興」が期待できるとしていますが、むしろ地域経済にダメージを与え、地域を崩壊させている海外の事例が複数報告されています。
韓国では、国民が利用できるカジノがオープンした地域で、その年から犯罪率、自殺率が急増しました。成長戦略であるどころか、ギャンブル産業の売上高の三倍を超える、社会的損失があると報告されています。
米国ニューハンプシャー州議会がカジノ合法化法案を否決した理由からも、私たちは多くを学ぶことができます。
- カジノ設置によりは既存の地元のレストラン、ホテル、会議場、娯楽施設、小売業に対する支出を減少させ、カジノ客増大の波及効果はない。
- カジノからの税収より依存症、犯罪、多重債務、家族崩壊などに対応する財政的負担が上回り、深刻な財政危機を招く。
- 強姦などの性犯罪、強盗、暴力的犯罪がカジノ開設後5年で10%増大する。
- 地域内のギャンブル依存症患者が倍増する。
- ギャンブル依存症の人の自殺率は通常の5倍から10倍。依存症の家族の自殺率も高い。
- ギャンブル依存者の子供の非行率は極めて高い。
このように、カジノ賭博場の設置は子どもたちを含むすべての市民を不幸にすることこそあれ、幸せにすることはありません。
多重債務問題の再燃
昨年7月に成立した「特定複合観光施設区域整備法」(いわゆる「カジノ解禁実施法」)によれば、カジノ事業者が客にギャンブルをするための金を貸し付けることができるとされ、その際、一定の金額を事業者に預け入れるという条件で、貸金業法が定める年収の3分の1という総量規制の適用も免除されるとされています。客は負けた分を取り返すためにますますギャンブルに夢中になり、依存度を高め、財産を失い借金だけが残るという構図です。おおきな社会的運動で貸金業法の総量規制が導入され、多重債務問題が解決に向かっている時に、それをなしくずしにするものです。入場料徴収に抑止効果は期待できません。
誰のためのカジノ設置か
いったいカジノ推進は誰のための施策なのでしょうか。いま海外のカジノ市場は飽和化し縮小傾向にあります。そこで外国資本のカジノ事業者は日本人の豊かな家計資産を狙っていると言われています。カジノ設置は市民の預貯金・資産を外国資本が吸い上げていくシステムの構築にほかなりません。借金をしてまでギャンブルに入れあげた多くの中高年が老後の資金を失っていくことになります。
観光客が日本に求めているものを見誤っている
近年たくさんの観光客が海外から日本を訪れています。日本の魅力の中にカジノはありません。彼らが日本に求めるものは、日本の風景、料理、おもてなしのこころ、伝統文化のみならずクールジャパンと呼ばれる独自の若者文化、清潔さ、安心安全であり、それらを大事にし、活かすことこそ観光の「戦略」になることは間違いありません。日本の町並みや美しい景色の中にカジノ賭博場をつくることは、せっかくの魅力を大きく損なうことになります。
世界の主流はカジノなしのIR
大規模国際会議場や展示場にカジノを併設することが誘致施設の「目玉」とされていますが、今や世界の主流は「カジノ抜き」の大規模施設です。2017年に世界で開催された、参加人員1千人以上の国際会議で、会場にカジノが併設されていたものは上位17位までひとつもありません。また、世界の主な展示場のランキング90位までで展示場一体運営のカジノがあるのは一か所のみです。
このようにカジノは家庭を壊し、地域社会を壊し、社会的コストも増大し、わたしたちの社会を深刻に傷つけるものです。カジノは日本のどこにも必要ありません。
以上