【食料部】「日本の『食』をとりまく状況を考える」学習会

食料部は10月24日、学習会「日本の『食』を取りまく状況を考える」を開催しました。講師の(株)資源・食糧問題研究所代表の柴田明夫さんは、世界の食糧市場の不安定化について説明、日本の農政を厳しく批判しました。

日本は食の輸入依存が続き、食料自給率の低迷に歯止めがかかっていません。世界人口の増加の影響や各地で起きている異常気象等々、食をめぐる状況の変化を私たちはもっと知り、考える必要があります。

柴田さんはまず、日本の能登の段々畑の風景と、アメリカアイオワ州の広大な農場の写真を示し、「日本はアメリカを手本として農業の大規模化へ舵を切ろうとしているが、日本では家族経営の農家が地域経済を担っ
ている。このままでは地域がたいへん厳しい状況になる」と懸念を訴えました。

世界の経済大国は、皆食糧生産大国なのに対し、日本は生産小国と述べ、2016年の小麦、トウモロコシ、コメ、大豆の総生産量が、アメリカ5億7400万㌧、中国5億8500万㌧、日本は900万㌧と紹介。
そして日本は約3000万㌧の食糧輸入の形で、その食糧生産の過程で使用される600億㌧強の水を輸入しているのと同じことになるため、「水はそれぞれの地域で大事にすべきもの」との考えに反するとして国際的な批判にあ
い、制約されつつあると述べました。

「食」は絶対的な必需品であるとともに、保存が効かず消費能力に限界があるため、適正供給量は非常に狭い範囲となる。そこに投機マネーも入り、需給バランスが少しでも崩れると価格が暴騰する。世界人口の増加と肉食の拡がりは農業の工業化、脱自然化をもたらし、地球温暖化や植物の多様性喪失、土壌劣化を起こしている、と問題の深刻性を指摘しました。

柴田さんは、世界の穀物貿易量が倍増し、戦略性が増していることを「穀物は武器」と語り、世界全体の穀物在庫の半分が中国の在庫になっており、これを「中国の食料確保戦略」と説明しました。

また、異常気象や自然界で相次ぐ不安な兆候は自然の反逆であり「人間の活動が地球の能力を超えたことで起きている」と述べ、「より安く」ばかりを追求したために農村が弱体化し、コメの生産と消費の下落が国土の保全を危うくしていると訴えました。

TPPや「攻めの農業」が零細農業者を追い詰める、種子法の廃止は「海外の市場に食を売った」と語り、家族経営のような社会的な生産単位の重要性を強調しました。

政府が「医療・福祉・食料・農業」の連携を成長戦略としていることについては、「かつて〝まるごと〟機能していた農村をバラバラにしたのは誰だ!」と語気を強め、「日本の〝萃点〟(すいてん・多くの学問、技術が交わり集まる点)としての農業・農村を見直すように」との発言で講演を締めました。

農業・農村を〝まるごと〟維持・保全してきた稲作をもっと大事にする必要があること、農業と工業の違いを知ろうとせず、長期的な視野を持たない人が国の舵取りをすることが、いかに危険かを痛感した学習会でした。