2018年7月11日
カジノ実施法案(特定複合観光施設区域整備法案)の廃案を求める緊急声明
~日本にカジノは要りません~
主婦連合会
主婦連合会はこれまで一貫してカジノの解禁に反対してきました。現在、カジノ実施法案は参議院での審議に移っていますが、6月9日の衆議院通過までの審議時間20時間にも満たずまったく不十分なものでした。カジノ解禁に対して各種世論調査で国民の65%以上が反対しているなか、政府・与党は今国会での法案成立を目指しています。日本で歴史上初めて民間賭博を合法化する法律をこのように数の論理で強引に成立させることは決して許されません。
法案の驚くべき中身
安倍首相は「世界最高水準のカジノ規制の導入」と述べていますが、法案から見えてくる「規制」は極めて不十分なものです。入場回数の制限は週3回とされ、28日間で10日に限られるとの説明ですが、これは24時間営業のカジノで連続3日、72時間入場し続けることができるというもので、依存を悪化させるのに十分な時間です。また、入場料を6千円徴収するとしていますが、一方で法案ではカジノ事業者が客に賭博金の貸付けを行うことを可能としています。貸金業法が定める年収の3分の1という総量規制の適用も免除され、客は負けた分を取り返すためにますますギャンブルに夢中になり、依存度を高め、財産を失い借金だけが残るという構図です。入場料徴収に抑止効果は期待できません。
誰のための解禁か
いったいこのカジノ解禁は誰のための施策なのでしょうか。海外のカジノ市場は飽和化し縮小傾向にあります。そこで外国資本のカジノ事業者は日本国民の豊かな家計資産を狙っていると言われています。当初政府は日本人の入場を制限し、外国人観光客をターゲットとすると説明していましたが、法案の中身が明らかになるにつれ、真実の構図が見えてきました。カジノ解禁は日本人の預貯金・資産を外国資本が吸い上げていくシステムの構築にほかなりません。借金をしてまでギャンブルに入れあげた多くの中高年が老後の資金を失っていくことになります。
日本にカジノは要らない
大規模国際会議場や展示場とカジノの併設が、今回の法案の「目玉」とされていますが、今や世界の主流は「カジノ抜き」の大規模施設です。2017年に世界で開催された、参加人員1千人以上の国際会議で、会場にカジノが併設されていたものは上位17位までひとつもありません。また、世界の主な展示場のランキング91位までで、展示場一体運営のカジノがあるのはマカオのみとなっています。
近年たくさんの観光客が海外から日本を訪れています。日本の魅力の中に現在カジノはありません。日本の自然、文化、料理、安全・安心など、観光に訪れる人びとが魅力に感じているものをもっと大事にすることこそ観光の「戦略」になることに間違いありません。日本の美しい景色の中にカジノをつくることは、せっかくの魅力を大きく損なうことになります。
政治は国民の幸福のためにあれ
カジノは暴力団等のマネーロンダリングに利用されるなど、設置地域の治安悪化につながり、犯罪を増加させます。ギャンブル依存症により本人のみならず家族の自殺率も高くなります。また依存者の子供の非行率は極めて高くなるなど青少年への悪影響もはかり知れません。
推進派はカジノの設置により「地域経済の振興」が期待できるとしていますが、むしろ地域経済にダメージを与え、地域を崩壊させている海外の事例が複数報告されています。そもそもカジノは、個人消費の面から見るとギャンブルへの支出が増大する分、地元の飲食店、娯楽施設への支出が減るという関係にあります。自治体にとっても、カジノからの税収より依存症、犯罪、多重債務、家族崩壊などに対応する財政的負担が上回るといわれています。カジノ設置することは大きな社会的損失と引き換えなのです。
このようにカジノは家庭を壊し、地域社会を壊し、社会的コストも増大し、わたしたちの社会を深刻に傷つけるものです。カジノは日本に必要ありません。日本の歴史上はじめて民間賭博を合法化するという大転換を、国民の大多数の反対の声を無視して政府が強引に進めようとしていることはとうてい容認できません。カジノ解禁には断固反対です。カジノ実施法案の廃案を強く求めます。
以上