2017年8月24日
内閣総理大臣
法務大臣
消費者担当大臣
経済産業大臣
金融庁長官
消費者庁長官
消費者委員会委員長 宛
民法の成人年齢引き下げの前に若年者の消費者被害防止・救済のための施策拡充を
主婦連合会
成人年齢を現在の20歳から18歳へ引き下げる民法改正法案の提出が検討されています。しかし、社会経験に乏しく取引等に関する知識や判断能力が未熟な若者の消費者被害は現在でも深刻であり、十分な対策のないまま引き下げれば被害が拡大することは明らかです。若年者の消費者被害防止・救済のための関連法の改正、施策の充実のないまま引き下げることには強く反対します。
民法では、未成年は保護者の同意がなければ契約出来ません。仮に契約した場合でも原則として取り消しが可能であり、若年者を被害から守っています。この取消権は悪質事業者が未成年への勧誘を避ける抑止力にもなっていますが、もし成人年齢が18歳に引き下げられれば、18歳、19歳がこの救済ルールから外れるため悪質商法のターゲットとされる可能性は多大です。
現行、成人年齢20歳の状態で、国民生活センターの調査では、18歳、19歳の若者と比べて、20歳の相談件数が格段に高くなっており、成人になったとたんに「フリーローン・サラ金」、「モバイルデータ通信」、「痩身エステ」といった高額、複雑な取引によるトラブルが生じている実態があります。他にもマルチやサイドビジネスといった商法に巻きこまれる若者の相談事例が多く報告されています。
2009年の法務省法制審議会による「民法の成年年齢の引下げについての最終報告書」には、引き下げを行うには「若年者の自立を促すような施策や消費者被害の拡大のおそれ等の問題点の解決に資する施策が実現されることが必要」と記されています。また引き下げの時期に関しては「こうした施策の効果の、若年者を中心とする国民への浸透が重要」としています。しかしながら施策の実現や効果の国民への浸透がないまま、改正案が提出されようとしています。
消費者委員会も、消費者庁からの諮問を受けて昨年9月から開催してきたワーキンググループの報告書で、「消費者被害の防止・救済のための相談体制の強化、制度整備などの措置が実施されるために必要十分な期間を確保すべき」と述べています。
政府はこれらの提言を真摯にとらえ、真に国民・生活者のための政策決定をしてください。
主婦連合会は実効性ある被害防止策・救済策がとられない限り、成人年齢を引き下げることには反対であり、以下の通り要望します。
記
- 消費者契約法に、若年者の知識・経験・判断能力の不足につけ込んだ方法で締結した契約の取り消し権を導入すること。
- 特定商取引法に、その契約が若年者の知識・経験・財産等に照らして問題がないことを事業者が確認する義務を導入すること。
- マルチ商法(連鎖販売取引)については、若年者に対する勧誘を全面的に禁止し、若年者取消権を設けること。
- クレジットの契約やキャッシング等を若年者が行う場合には資力要件を厳格化すること。また、事業者に支払能力の調査と過剰な与信防止の義務を導入すること。
以上