【パブコメ】第7次エネルギー基本計画(案)に対する意見

2025年1月24日

資源エネルギー庁長官官房総務課

第7次エネルギー基本計画(案)に対する意見

主婦連合会

「第7次エネルギー基本計画(案)」に対する意見募集はこちら

意見 No.1
■意見の該当箇所
Ⅳ.エネルギー政策の基本的視点(S+3E)
Ⅴ.2040年に向けた政策の方向性
1. 総論
(1) エネルギー政策の基本的考え方
3. 脱炭素電源の拡大と系統整備
(2) 再生可能エネルギー
及び全体
■意見
「今後、再生可能エネルギー、原子力などエネルギー安全保障に寄与し、脱炭素効果の高い電源を最大限活用することにより、エネルギー自給率を向上させる必要」(P.14~15)、「再生可能エネルギーか原子力かといった二項対立的な議論ではなく、再生可能エネルギーと原子力をともに最大限活用していくことが極めて重要」(P.16)などの記述があるが、原発のリスク、コスト、また気候対策効果の面でのデメリット(別項にて意見あり)に鑑み、再エネと原発の並記ではなく、再エネ・省エネによる早急なゼロエミッション化を目指す計画としてください。
■理由
 このままでは再生可能エネルギーの導入は抑制され、必要な排出削減は実現できず、化石燃料輸入による国富の流出が続き、国家予算の無駄遣いとなります。リスク、コストの両面で国民に大きな負担を強いることになります。

意見 No.2
■意見の該当箇所
Ⅴ.2040年に向けた政策の方向性
3. 脱炭素電源の拡大と系統整備
(3) 原子力発電
及び全体
■意見
 これまでの基本計画にあった「可能な限り原発依存度を低減する」という文言が削除され、原発を「最大限に活用する」方向に転換し、原発への回帰を計画の随所で鮮明にしてていることは、今回の基本計画の最も重大な問題点です。福島原発事故の教訓はどこへ行ったのでしょうか。地震大国の日本で原発を推進することの極めて高いリスク、ライフサイクルで見た場合のコストの高さなどあらゆる側面から、一日も早い脱原発の実現こそ、基本計画の基調とすべきです。
■理由
 世界の陸地面積の0.4%しかない日本に世界の活火山の7%があり、世界の地震の2割が日本で起きるといわれています。福島第一原発の事故ではいまだ多くの人々が故郷へ帰ることができずにいます。日本において原発を推進することは、将来にわたって国民に不利益をもたらします。また気候温暖化への対策としても原発には問題があります。稼動中はCO2を出さないとしても、ウランの採掘から精製まで莫大な電気を使うため、決して脱炭素電源ではありません。発電コストでも原発(12.6円/kwh)は太陽光(8.1円/kwh)に比べ高く、更に原発の建設、安全対策、廃炉までのライフサイクルで見た場合、また万一の事故も想定した場合、原発の推進に経済上の有利性が無いことは明白です。また、核燃料サイクルの計画に将来性が無い(別項に意見あり)ことから、原発を稼働し続ける限り、行き場のない、使用済み核燃料がたまり続けることになります。これらのことから、わざわざ高く、危険な電源を推進しようとする非合理を止め、計画の基調から見直すべきです。

意見 No.3
■意見の該当箇所
Ⅴ.2040年に向けた政策の方向性
2. 需要側の省エネルギー・非化石転換
■意見
省エネについては建物の「断熱」が有効です。日本の家屋の断熱性能は世界と比べてかなり低いため、新築住宅の基準見直しや、学校など公共施設の断熱性能の向上を求めることについての記述を提案します。
■理由
 COP28で合意された「2030年までの再エネ設備容量3倍及びエネルギー効率改善率2倍」というグローバル目標に、先進国である日本として大きく貢献する必要があります。

意見 No.4
■意見の該当箇所
Ⅴ.2040年に向けた政策の方向性
3. 脱炭素電源の拡大と系統整備
(3) 原子力発電
②今後の課題と対応
(ウ)バックエンドプロセスの加速化
(a)核燃料サイクルの推進
■意見
核燃料サイクルの推進を掲げることをやめるべきです。
■理由
六ヶ所村の再処理工場は数十年間「建設中」のままであり、まったく完成の目途はたっていません。そもそも肝心の核燃料サイクルを担うはずだった「もんじゅ」は1兆円以上の国費を費やした末に、何ら成果を出せないまま廃炉となりました。核燃料サイクル政策は既に破綻しています。その予算を廃炉技術やトリチウム分離技術の研究、環境に優しい安全なエネルギー開発に振り向ける方が国益に適っています。

意見 No.5
■意見の該当箇所
Ⅴ.2040年に向けた政策の方向性
3. 脱炭素電源の拡大と系統整備
(4) 火力発電とその脱炭素化
■意見
 早急かつ確実に脱石炭・脱化石燃料を実現する方向で計画を立て直すべきです。
■理由
 2024年4月の主要7カ国(G7)会合では「2030年代前半の石炭火力発電の廃止」が合意され、イギリスが2024年9月に脱石炭を達成しました。また、2023年のCOP28では、ガスや石油もふくめ「化石燃料からの脱却」が合意されるなど、世界は確実に脱石炭・脱化石燃料の流れです。また日本は化石燃料を輸入に頼っており、その輸入額は年間数十兆円にも及びます。貿易収支の改善やエネルギー自給率の観点からも、化石燃料からの脱却が必要です。

意見 No.6
■意見の該当箇所
Ⅴ.2040年に向けた政策の方向性
3. 脱炭素電源の拡大と系統整備
(4) 火力発電とその脱炭素化
■意見
石炭火力の項において、「アンモニアやCCUS等を活用した脱炭素化を、長期脱炭素電源オークション等を通じて促進する。アンモニアを活用した発電について、燃焼器の技術開発や発電実証をグリーンイノベーション基金も活用しながら進めており、国内外の市場獲得も睨みながら社会実装を目指していく。」と書かれていますが、このような石炭火力発電の延命策に関する記述は削除すべきです。

■理由
 これらの新技術は高コストで、温室効果ガス排出削減効果の面、また気候変動対策が決定的に重要なこの10年の内での実現可能性に大きな問題があるからです。

意見 No.7
■意見の該当箇所
Ⅶ.国民各層とのコミュニケーション
3.政策立案プロセスの透明化と双方向的なコミュニケーションの充実
■意見
 「審議会等を通じた政策立案のプロセスについて、最大限オープンにし、透明性を高めていく。」と記述されていますが、そもそも本基本計画を議論する審議会のメンバーの構成に偏りがあり、原発推進や化石燃料維持を支持する委員が多数派となっており、立案プロセスの前段階において透明性、公平性を欠いていることは問題です。また委員のジェンダーでは男性、年齢では50代以上が多く、女性や若者が少ないという偏りも問題です。気候変動の影響をより大きく受ける若者の意見や、多様な立場の専門家や環境団体を策定プロセスに加えることが必要です。
■理由
現状、市民の参加は意見箱やパブコメなどに限られており、国会での議論もなく計画は閣議決定されます。全ての国民が影響を受けるエネルギーや気候変動対策についての計画であることから、議論の場のメンバー構成の公平性を確保し、民主的で透明性の高い議論を十分に行い、その上で議論の経緯・論点などを、よりわかりやすく国民に伝えることが重要だからです。

以上