【パブコメ】民法(成年後見等関係)等の改正に関する中間試案 に関する意見

2025年8月25日

法務省民事局参事官室

 

民法(成年後見等関係)等の改正に関する中間試案 に関する意見

主婦連合会

 

◆意見1
【意見の対象項目】
第1 法定後見の開始の要件及び効果等
1 法定後見の開始の要件及び効果
(1)法定後見制度の枠組み、事理弁識能力の考慮の方法並びに保護開始の審判の方式及び効果

 【意見】
  【乙1案】
「①事理弁識能力が不十分である者については、家庭裁判所は、必要があると認めるときは、請求権者の請求により、本人が特定の法律行為(日用品の購入その他日常生活に関する行為を除く。)をするにはその保護者の同意を得なければならない旨の審判をすることができるものとする。

②事理弁識能力が不十分である者については、家庭裁判所は、必要があると認めるときは、請求権者の請求により、本人のために特定の法律行為について保護者に代理権を付与する旨の審判をすることができるものとする。」

に賛成です。

【意見の理由】
 「障害者権利条約の第1回対日審査に関する障害者権利委員会の総括所見」および政府による「第二期成年後見制度利用促進基本計画」に照らして、意思決定を代行する制度を必要最小限に留めること、また尊厳のある本人らしい生活の継続という理念を実現するためには【乙1案】が最も相応しい改正であると考えます。

 

◆意見2
【意見の対象項目】
第1 法定後見の開始の要件及び効果等
1 法定後見の開始の要件及び効果
(2) 法定後見に係る審判をするための要件としての本人の同意等

 【意見】
  イ、【甲案】
「(第1の1(1)において【乙1案】をとることを前提に)

①本人以外の者の請求により、〔保護を開始する旨の審判及び〕保護者の同意を要する旨の審判をするには、本人の同意がなければならないものとする。ただし、本人がその意思を表示することができない場合において、本人の身体又は財産に重大な影響を与えるおそれがあるときはこの限りでないものとする。

②本人以外の者の請求により、〔保護を開始する旨の審判及び〕保護者に代理権を付与する旨の審判をするには、本人の同意がなければならないものとする。ただし、本人がその意思を表示することができない場合において、本人に著しい不利益があるときはこの限りでないものとする。」

に賛成です。

【意見の理由】
 意見1と同じ理由。法定後見に係る審判をするにあたっては、本人の請求や同意があることが前提とされるべきであり、もし本人にその能力がない場合には、具体的かつ高度な必要性があることを要件とすべきです。

 

◆意見3
【意見の対象項目】
第2 法定後見の終了
1 法定後見の開始の審判又は保護者に権限を付与する旨の(個別の)審判の取消し

 【意見】
(2)
「①本人の事理弁識能力が回復してその程度が不十分であるとはいえなくなったときは、家庭裁判所は、請求権者の請求により、〔保護開始の審判、〕保護者の同意を要する旨の審判及び〔特定の法律行為を取り消すことができる旨の審判並びに〕保護者に代理権を付与する旨の審判を取り消さなければならないものとする。

②家庭裁判所は、必要がなくなったと認める場合には、請求権者の請求により、保護者の同意を要する旨の審判及び〔特定の法律行為を取り消すことができる旨の審判並びに〕保護者に代理権を付与する旨の審判を取り消すことができるものとする。」

に賛成です。

【理由】
「第1の1(1)において【乙1案】をとる場合には(2)よるものとする」とされているため、挙げるまでもない意見ではありますが、第1と第2は重要な組み合わせであるため、改めて意見として挙げました。意見の理由の考え方は意見1と同じです。

 

◆意見4
【意見の対象項目】
第3 保護者に関する検討事項
2 保護者の解任(交代)等

 【意見】
  【乙1案】
「(1) 解任事由
①解任事由に関して、本人の利益のために特に必要がある場合を念頭において、新たに解任事由の規律を設けるものとする。
②新たに設ける解任事由による解任の手続は、請求権者による請求又は職権により、行うものとする。

(2) 欠格事由
保護者が現行法の解任事由によって解任されたことを欠格事由とする規律は維持するものとし、新たに設ける解任事由によって解任されたことを欠格事由としないものとする。」

に賛成です。尚、今後の議論の推移によっては【乙2案】を支持することも在り得えます。

【意見の理由】
 本人の状況の変化に応じた成年後見人等の交代が実現せず、本人がそのニーズに合った保護を受けることができないことが今回の制度見直しにおける現状と課題に挙げられていることからも、新たな解任理由の規律を設け、現行よりも柔軟に保護者の交代が可能となる改正が必要です。尊厳のある本人らしい生活の継続が重要であり、必ずしも保護者に落ち度がない場合でも、本人と保護者との相性などを含み、本人の意向、本人の幸福や安心感といった観点から保護者の交代が可能となる制度の導入を求めます。

 

◆意見5
【意見の対象項目】
第3 保護者に関する検討事項
3 保護者の職務及び義務
(1)本人の意思の尊重及び身上の配慮 

【意見】
 記載されている通り、「保護者が本人の意思を尊重するに当たっては、〔本人の心身の状態を考慮した上で、〕本人に対し、その事務の処理の状況その他必要な情報を提供し、本人の意思を把握するように努めなければならないことを明確にすること」に関し、本人の尊厳、本人の人間らしい生き方という観点から議論が深められることを求めます。

【意見の理由】
 本人の意思を尊重するためには、本人の意思を把握しなければなりませんが、把握するにあたっての保護者の側の働きかけの程度、意思を把握するための技術、そのための適性が今の制度からは見えてきません。保護者によって簡単に「意思は把握できなかった」と結論づけられるようでは、障害者の権利に関する条約に沿う制度には到底ならないと考えます。どうしたら本人の意思を把握することに関してその精度、程度を引き上げることができるか、また、何をどの程度保護者に求めるのか、その他の立場の人との連携で達成できるものがあるのか、そしてそれらを制度としてどのよう実現するのか、更なる議論が必要です。

以上