【意見書】《交通機関での酒類の「強制視認」広告に関する申し入れ》

《交通機関での酒類の「強制視認」広告に関する申し入れ》
2004年7月2日

《ビール酒造組合、日本洋酒酒造組合、日本酒造組合中央会、日本蒸留酒酒造組合  宛》

 

近頃、車両や駅構内を使った、インパクトのある広告手法が次々と開発されています。交通機関を利用するために、乗客が必ず通らなければならない空間、必ず見なければならない場所を占領する形態で行なう「強制視認」広告です。

交通機関は公共性が非常に強い場所で、あらゆる人々が利用しています。中には、通学途中の未成年者、医者から飲酒を止められている人、妊婦、通勤時に早朝から酒類の広告を強制的に見せられることを不愉快に感じる人もいます。

この6月に発表された厚生労働省の「成人の飲酒実態と関連問題の予防に関する研究」によると、暴言・暴力・からまれる・強要など飲酒に関連した何らかの問題行動の被害を受けた者は男性の31.3%、女性の26.3%で、合わせて3040万人にものぼることが明らかになりました。うち、その被害経験がその後の生き方や考え方に何らかの影響を与えたと回答した者は1400万人と推計されています。「飲酒天国ニッポン」の中で、これほど多くの人々が飲酒による深刻な被害を被っている実態があるのです。

そもそも酒類は、未成年者飲酒・関連疾患や依存症による健康被害・事故や喧嘩・犯罪など、多くの社会問題を引き起こす側面を持つため、世界には、屋外に広告すること自体を法律で禁じている国、細かな規制をかけて場所を限定している国が数多くあります。

日本では社会規制の整備が遅れているため法律による規制は未だありませんが、だから何をやってもいいということではなく、酒類業界には社会的な責任があり、当然、自制が求められるものです。

この6月、渋谷・新宿・赤坂見附の地下鉄駅構内で、アサヒビールによる巨大な缶を演出した柱巻き広告がありました。7月には、渋谷でサントリーが柱巻き広告を実施しています。昨年は、山手線でのサッポロビールによる車体広告がありました。サッポロビールはキャラクターや飲酒場面を用いた山手線車内での動画広告も行なっています。これらは、交通機関での酒類の広告として行き過ぎといわざるを得ず、個別に抗議を行なっています。

広告収入増加を図る交通機関、広告手法の技術革新、酒類メーカー間の競争激化、広告代理店による売り込みという四要素がからみあって、今後もますます新たな問題が生まれる可能性があります。以下の対策を緊急に申し入れます。

1)組合内で、交通機関での強制視認広告は行なわない旨の申し合わせをすること

●交通機関での強制視認広告の例
・車体広告(ウィンドウ・ビジョンも含む)
・車内独占広告
・車内動画広告
・自動改札ステッカー広告
・階段へのステッカー広告
・柱巻き広告
・大型ポスター連続貼り

以上

※日本アルコール問題連絡協議会 加盟団体:
特定非営利活動法人ASK(アルコール薬物問題全国市民協会)/イッキ飲み防止連絡協議会/アディクション問題を考える会(AKK)/(社)全日本断酒連盟/日本アルコール・薬物医学会/日本アルコール関連問題ソーシャルワーカー協会/日本禁酒同盟/日本キリスト教婦人矯風会/日本禁酒禁煙協会/救世軍日本本営

 

国税庁酒税課への報告文
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《交通機関での酒類の「強制視認」広告に関する申し入れについて》
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2004年7月2日

《国税庁酒税課  宛》


添付の申し入れを、各酒造組合に行いました。
なお、地下鉄駅構内の柱巻き広告とは、以下のものです。



04年6月7日
赤坂見附駅構内 アサヒビールによる缶状の柱巻き広告 
 

 

04年7月1日
渋谷駅構内  サントリーによる柱巻き広告