2007年5月29日
内閣総理大臣
内閣府特命担当大臣
厚生労働大臣
農林水産大臣 臨時代理国務大臣 宛
「安全・安心社会」の創造へ向け「総合的事故防止策」の導入を
~~こんにゃく入りゼリーの事故はなぜ防止できなかったのか~~
主婦連合会
「こんにゃく入りゼリー」を食べた7歳の男児が相次いで死亡するという痛ましい事故が発生しました。当該食品については10年以上も前から子どもや高齢者を中心に窒息事故が続発し、そのつど、形状・表示・素材の改良が図られてきたと報道されてきましたが、今回の事故は、そのような10年にわたる行政・業界・企業の取り組みが全く効果のない、対症療法的な措置だったことを示しています。しかも、この10年間にも事故が相次いでいたことがわかり、関係省庁・業界・企業の責任は極めて重いと言わざるを得ません。
アメリカでは2003年にFDA(食品医薬品局)が「こんにゃく入りゼリー」について窒息事故発生の危険性を指摘し、メーカーによる大量回収が取り組まれました。同じ頃、EU(欧州連合)でもゼリーへのこんにゃく使用を禁止する措置をとるなど、具体的な対策が採用されました。しかし、日本では、規制らしき規制はなく、野放し状態のまま、いたずらに尊い生命を危険にさらし続けてきたのが実情と言えます。
しかも今回の2件の死亡事故は、国民生活センターが公表したことで明らかになったものの、同センターおよび内閣府、関係省庁は、1例目の死亡事故の事実を把握していながら、2例目が発生するまで未発表のままであったなど、その対応には事故の拡大防止へ向けた姿勢としては大きな疑問が指摘されます。このような事態は、「事故情報の行政間共有化」だけが進み、肝心の消費者への適切な情報提供が軽視されていることを示していると判断せざるを得ません。「安全・安心社会」の実現には、事故情報を知り得る立場にある行政機関の側にも大きな課題が突きつけられていることを認識すべきです。
主婦連合会は、事故事例の発覚のたびに現状のような個別商品ごとの対症療法的措置で済まそうとするならば今後も必ず同様の重篤事故は発生し続けると訴えてきました。今回のような悲惨な事故の再発防止へ向け、「消費者の安全を守る権利」「救済される権利」に基づき、以下の点を速やかに導入されるよう、強く求めます。
記
1. 今回の事故に関する原因究明を早急に実施し、その結果が判明するまで、全てのこんにゃくゼリーの販売を中止するとともに、今回の当該事故食品については回収措置を取ること。
2. 食品を含む全ての消費者製品に関する事故関連情報の報告義務付けを導入すること。
報告対象事業者は、製造業者・輸入業者はじめ、流通・販売業者など関連する事業者すべてを含めること。
3. 事故関連情報の行政間共有化に加え、速やかに消費者も事故情報を知り得る「社会的共有化システム」を構築すること。生命への危険性を知りながら、事故情報を開示しようとしない行政機関の施策姿勢は誤りであり、即刻改めること。
4. 「リコール社告」の改善および業種横断的な規格化と、すべての消費者製品に関する強制的リコール制度の導入を図ること。
5. これら事故防止対策を行政・業界の枠を越えて一元的に担う執行権を持った独立機関「事故防止センター」(仮称)を早急に創設すること。
6. 被害者救済を速やかに、完全に実施するために、現行製造物責任(PL)法を抜本的に改正すること。改正にあたっては被害者・消費者および消費者団体の意向を十分に反映させること。
7. 国民生活センターは昨年10月以降、死亡・重篤事故を内閣府に定期的に報告しているが、今回の「こんにゃく入りゼリー事故」もこの中に含まれていることから、これまでの全ての「死亡・重篤事故報告事例」の内容を国民生活センターの判断で速やかに公表すること。国民生活センターはそのようにして初めて国民の付託に応えることになることを認識すること。
以上