【意見書】《『地方消費者行政充実・強化のためのプラン(案)』に対する意見・提案》

申し入れ・要望

2010年1月28日

『地方消費者行政充実・強化のためのプラン(案)』に対する意見・提案

主婦連合会

■ 意見の総論
1.地方消費者行政の充実・強化については、「プラン案」で示されているように、現在の「重層性」「多様性」を認識し、「地方分権」「主体性・創意工夫」を尊重することが重要です。しかし、その前提に立ちつつも一歩踏み込んで記載すべきだと思われるのは、「中央と地方の消費者行政推進へ向けた一体的・連携的組織改革の必要性」ではないでしょうか。「地方の組織改革」こそ必要であって、それについて消費者庁がなすべきことは何か、その柱を盛り込むべきではないかと思います。

2.国民生活センターの役割については今後の「消費者基本計画」の策定や消費者委員会の「地方消費者行政の充実へ向けた検討」でも論点になりますが、地方消費者行政との関連では、「相談体制整備への支援」「テスト業務への支援」「啓発活動への支援」など、関連分野が極めて多いのが現状です。しかし、同センターの機能強化だけでは、不十分な分野もあります。中でも、「商品テスト・原因究明」の分野は、「事故情報の一元化」に関連するだけに慎重な検討が必要です。実際、国民生活センターの機能を強化するだけでは「事故情報の一元化」は不十分なままです。そのような分野を記載した箇所では、今後の検討の方向性を見据えつつ、記載内容を修正しておく必要があると考えます。

3.消費者にとって消費者行政の充実へ向け最も肝心なことは「消費者の参加」であると考えます。プラン案では「参加型活動の展開」として記載されていますが、「参加」には意見の表明とその反映もあります。主婦連合会は参加を保証する「消費者からの申出制度」の導入・整備を消費者行政全般に対しずっと求めてきました。全国の自治体が「消費者からの申出制度」を整備することが必要です。と同時に、中央と地方の行政機関の関係でも、自治体から消費者庁に対する「申出」を制度として導入することが求められます。自治体によっては毎年、自治体で発生した消費者問題の改善へ向け、関係省庁に対し、施策の提案をしてきたところもあります。しかし、各省庁の裁量によって、聞き置くだけの対応が目立っていました。この「参加」について、制度的保証を記載することが重要と思います。


■ 個別要望事項

1.横断的な場づくりだけではない組織改革の必要性を

 「地方への期待」の中に、自治体ごとの「推進本部」などの設置に伴い、「組織改革の実現」を明確にした「地方への期待」を盛り込んでください。特に都道府県レベルの組織改革は重要で、その際の基本は、中央と同様に、地方でも消費者施策について一元的対応がとれるようにめざすことです。「安全」「取引」「表示」及び「執行」の分野についての一元化の必要性を盛り込み、創意工夫を期待していることを記載してください。この点に関する「消費者庁としての取組み」として「必要な法制度の改正、権限委譲などの制度の改善、予算面による支援、人員の派遣等の検討」などを明記してください。


2.国民生活センターの位置付け・あり方の検討を

 国民生活センターによる支援措置に関して、「消費者庁としての取組み」として、独立行政法人である同センターの位置付けの見直し・検討の方向性を記載してください。また、事故情報の一元化の核心となる「商品テスト」「原因究明」などの業務については、「国民生活センターの機能強化」だけでは不十分なことから、「消費者庁としての取組み」として「国民生活センターや製品評価技術基盤機構(NITE)など、それぞれの原因究明・テスト機関の機能を踏まえた実効性ある仕組みの創設」と明記してください。都道府県など自治体では、原因究明などのテストを国民生活センターよりも製品評価技術基盤機構(NITE)に依頼するところが圧倒的に多いのが実情です。同センターへの依頼が少ないのは全国に一箇所しかなく、時間・費用の点で難点があることを挙げる自治体もあります。その現状のままに、国民生活センターの「商品テストの機能の充実を図り」、他の機関との「一層の連携を図る」としても、不十分なままとなります。従って、NITEを含めた原因究明・テスト機関の機能・ノウハウを検討し、実効性ある仕組みを創設していくことが最も効果的と思われます(P21関連)


3.日本版スーパーコンプレインツ(申出制度)の導入・整備を

 消費者庁に「地方協力課」を設置することに伴い、自治体からの申出について調査・検討し、政策に反映させることを保証した制度の導入を盛り込んでください。また、消費者庁及び消費者委員会、さらに自治体に対し、「消費者からの申出制度」の導入・整備が必要な点を明記してください。このような国レベル・地方レベルでの「日本版スーパーコンプレインツ制度」の導入を明記してください。


4.消費者・市民ネットワークの整備と政策決定過程への参加の保証を

 地方消費者行政の推進・充実・強化は、地域の消費者・市民ネットワークの構築・整備、それとの行政との連携が鍵となります。それは、中央・地方の消費者行政の一体的・連携的推進と、地方独自の消費者行政推進のかなめともなります。 そのために、消費者・市民団体、環境NGO、高齢者団体、乳幼児関連団体、障がい者団体、各種被害者救済団体等、地域で活動する自主的団体について、消費者行政をめぐる情報提供を積極的に実施し、当該団体が意見を表明する機会を保証するなど、行政と消費者・市民団体のネットワークの構築が求められます。それら意見が政策に直接反映されるように、政策決定過程への参加を保証するための必要な措置を盛り込んだ制度の検討を「地方への期待」として明記してください。 この点についての「消費者庁の取組み」として、「消費者基本計画」との整合性を踏まえ、地方との連携、消費者団体等との連携のあり方、その検討の推進として盛り込んでください。

以上