【申告書】《誤解を招くアルコール飲料の果実表記に関する申告書》

2011年2月24日

消費者庁長官 宛

誤解を招くアルコール飲料の果実表記に関する申告書 

日本アルコール問題連絡協議会(※)
主婦連合会

 果汁入りの低アルコール飲料の中に、果汁含有率がきわめて低いにもかかわらず、商品名や容器デザインで果実をことさらに誇張し、消費者を誤認させるものが目立っています。清涼飲料であれば、「果汁の使用割合が5%未満のもの及び果汁を含まないものは絵表示は禁止」「果汁100%未満はスライスや果汁のしずくは禁止」等の基準があります。しかし酒類はこの基準から除外されているため、上記のような問題が起きてしまうのです。
 次ページにあるように、アサヒビール株式会社のチューハイ「果実の瞬間」やサントリー酒類株式会社の「-196℃ こだわり果樹園」は、消費者を誤認させるものであり、「不当景品類および不当表示防止法」第4条に違反すると考えます。その他にも同様の問題をもつ商品があると思われますので、消費者庁がこれら商品群を調査し、措置命令されることを求めます。

なお、調査の結果をご連絡いただきたく、お願いいたします。

【不当景品類および不当表示防止法に違反すると考える理由】
1)チューハイ「果実の瞬間」(アサヒビール株式会社)

「果実の瞬間」という商品名、みずみずしい果実の絵表示(スライスも含む)、「国産〇〇」というアピールから、相当量の果汁が含まれているように受け取れます。しかし、少ないものは0.2%、多いものでも3%しか果汁は含まれていません。

同社は昨年12月7日に、冬限定缶として新発売した「国産とちおとめ」について、ホームページに以下のように記載しています。
「国産とちおとめ」は、とちおとめならではの華やかでみずみずしい香りと爽やかな甘さをいかし、さっぱりと飲みやすい味わいに仕立て上げました。(http://www.asahibeer.co.jp/news/2010/1104.html)

しかし、含まれている「とちおとめ」の果汁はたったの0.2%です。微量しか含まれていないにもかかわらず、「○○ならではの」と国産果実を強調することは、消費者の誤認を招きます。

 2)「-196℃ こだわり果樹園」(サントリー酒類株式会社)

「こだわり果樹園」という商品名、目立つ産地・農園名の記載、果実の絵表示(スライスも含む)と農園風景から、相当量の果汁が含まれているように受け取れます。しかも、ローマ字で小さく「CHU-HI」と記載されているだけなので、消費者にとって、下方の「酒マーク」とアルコール分表示を見逃せば、アルコール飲料であることはまずわかりません。

果汁%の表示がないのは、果汁添加ではなく、果実の成分が溶け込んだ「浸漬酒」を使っているためということです。したがって、ここまで大々的に産地を謳っている果実の成分が溶け込んでいるのは、含有され4-5%のアルコール分にあたる部分のさらにわずかな部分にすぎません。しかし果汁%表示がないため、消費者はその事実にさえ気づけません。


【申告にあたっての現状】

1990年代後半から2000年代前半にかけて、果物味の低アルコール飲料が次々発売されました。これらの商品の容器には果物の絵柄が大きく描かれ、果汁入り清涼飲料のようなデザインが多く見られました。そのため、アルコール飲料であることが分かりにくく誤飲を招く、未成年者の飲酒を誘引する、果汁飲料や清涼飲料では厳しく規制されている表示がまかりとおっているなど、さまざまな問題がありました。

NPO法人ASKと主婦連合会は、それらの問題の是正を求め、公正取引委員会に申告書を提出し、各メーカーに再三要望書を提出してきました。その結果、日本洋酒酒造組合は、「低アルコール度リキュール類の特定の事項の表示に関する自主基準」を制定。また、飲酒に関する連絡協議会では「酒類の広告・宣伝に関する自主基準」を定め、徐々にではありますが、お酒らしい容器に改善されつつあります。

しかし、いまだに果実等の図柄の扱いについては清涼飲料の基準との隔たりが大きく、消費者に対して、果汁がたっぷり含有されていると誤認させ、またアルコール飲料でないと誤認させる大きな要因となっています。実際に、近時も誤飲事故が報告されており、独立法人国民生活センターでは、2010年11月18日付の子どもサポート情報で「子どもがジュースを飲んだら酔っ払った!?」と題し、子どもの飲食物に注意を配るよう呼びかけています。

また、東京消防庁も2010年9月27日、アルコール飲料の誤飲で急性アルコール中毒による救急搬送をされた22名(0-10歳が20名)中、容器などが類似しているため清涼飲料と誤認して飲んだ人が8名と注意を喚起しています。酒類メーカーはこれらの事態を考慮し、社会に対する責任(CSR)を喫緊に果たすべきだと考えます。

以上

※日本アルコール問題連絡協議会 加盟団体:
特定非営利活動法人ASK(アルコール薬物問題全国市民協会)/イッキ飲み防止連絡協議会/アディクション問題を考える会(AKK)/(社)全日本断酒連盟/日本アルコール・薬物医学会/日本アルコール関連問題ソーシャルワーカー協会/(財)日本禁酒同盟/(財)日本キリスト教婦人矯風会/日本禁酒禁煙協会