【意見書】《「ふりそでーしょん」プロモーションビデオのイッキ飲み場面削除を求めます》

申し入れ・要望

 2013年1月18日

 株式会社ワーナーミュージック・ジャパン 代表取締役会長兼CEO 宛

「ふりそでーしょん」プロモーションビデオのイッキ飲み場面削除を求めます

イッキ飲み防止連絡協議会
特定非営利活動法人ASK(アルコール薬物問題全国市民協会)
主婦連合会

昨年3月から現在までに、報道された事例だけで、6人の大学生が飲酒コンパ後に亡くなっています。1年間に6人もがイッキ飲みなどで死亡する事態は、近年にないものです。そうした中、きゃりーぱみゅぱみゅさんの新曲「ふりそでーしょん」のプロモーションビデオがカラオケ店等で広く流されると、若者のイッキ飲みを助長する懸念があり、急ぎ対処をお願いしたく要望します。

【要望内容】

上記プロモーションビデオから、

●瓶からイッキ飲みする場面

●グラスを逆さにして飲むなど痛飲して酩酊する一連の場面

を削除してください。

1月30日までに御社の対応をお知らせくださいますよう、お願いします。

対応の内容はマスコミに通知させていただきます。

【理由と背景について】

1.若者への影響力の大きさ

アルコールは中枢神経抑制剤であり、酔いとは脳のマヒです。短時間に大量に飲む「イッキ飲み」は命にかかわる非常に危険な飲み方です。プロモーションビデオの中で、きゃりーぱみゅぱみゅさんは、相当量のアルコールをグラスやボトルから一気に飲んで酔っぱらうように描写されています。ラストで、吐きそうになっている場面がありますが、「これだけ飲めば命を失う危険もある」ということは視聴者には伝わりません。

実際、亡くなった学生たちと一緒の場にいた人たちが、必ずと言っていいほど口にするのが「まさか死ぬとは思わなかった」です。

きゃりーぱみゅぱみゅさんは子どもや若者のファンが多く、プロモーションビデオは、ダンスや歌を真似するために視聴されます。影響力の大きさが心配されます。

私たちは20年以上にわたって、若者の死亡事故を防ぐため、懸命にイッキ飲み防止キャンペーンを行なってきました。毎春、酒類業界の支援を得てポスター・チラシを作成し大学等に配布、一般にはスマホのアプリを無料配布するなど、工夫を重ねて啓発活動をしています。 イッキ飲ませ死亡事故でわが子をなくした遺族が設立した「イッキ飲み防止連絡協議会」では、関係団体や酒類メーカー等の協力を得て、1992年からイッキ・アルハラ防止キャンペーンを展開していますが、死亡事故に歯止めがかかりません。

昨年6月には、フジテレビの「めちゃイケ酒豪No.1は誰だ!決定戦」で、急性アルコール中毒を招きかねない飲酒場面やそれを肯定し助長する発言などがあり、申し入れを行ないました。同局では若者に与える影響の大きさを理解してくださり、番組ホームページでアルハラについての情報を提供、再発を防ぐため局内のプロデューサー・ディレクターへの周知や、「バラエティ制作プロデューサー会議」「ドラマ制作プロデューサー会議」「コンプライアンス等担当者会議」などで勉強会が行なわれています。(資料参照)

若者の死を防ぐために、こうした努力が各方面で続けられていることを、ご理解ください。

2.女性はアルコールの害を受けやすいこと

日本では年々、女性の飲酒が増えています。2008年にはついに、20代女性の飲酒率が男性より高くなるという逆転現象が起きました。急性アルコール中毒で搬送される女性の割合も増加しています。

●女性は男性より少ない飲酒量・飲酒期間で、肝硬変などの臓器障害を起こします。

●飲酒が習慣化してから、男性のおよそ半分の期間でアルコール依存症になります。

●少量の飲酒でも乳がんの危険が高まります。(1日当たりのアルコール摂取量が10g増えるごとに、リスクは10%上昇)

●大量の飲酒は女性ホルモンの分泌を低下させ、月経不順・無月経・卵巣委縮・性交痛などを引き起こすリスクがあります。

●妊娠中の飲酒は胎児性アルコール症候群(FAS)をはじめ深刻な障害につながるリスクがあります。

3.世界の潮流

現在、欧米各国やロシア、韓国、タイ、オーストラリア、ニュージーランドなどで次々と「有害なアルコールの使用」を防止するための社会規制やキャンペーンが行なわれています。これはWHOが2010年に採択した「有害なアルコールの使用を低減するための世界戦略」に沿ったものです。

たとえば韓国では女性人気グループT-ARAが、青少年への影響を考慮してアルコールのCMには出演しないことを宣言しています(資料参照)。

きゃりーぱみゅぱみゅさんは、海外の若者からも高い関心を持たれているファッションリーダーでありアーティストであると思います。

こうした情勢に、ぜひご配慮ください。


【急性アルコール中毒等による大学生の死亡事例(2012-13)】

立教大学1年 死亡日:2012年3月4日

テニスサークルの春合宿で、学生とOBおよそ80人が飲酒。翌朝、1年生男子が布団の中で吐しゃ物をのどに詰まらせているのが見つかり、病院に運ばれたが、まもなく死亡。

山梨学院大学2年 死亡日:2012年3月15日

部の卒業生を送り出すコンパで酒を飲み、途中で気分が悪くなった。いったん仲間が部室に運んだが、体調が悪化したため救急車で運ばれ、搬送先の病院で死亡。

小樽商科大 1年 ★未成年 死亡日:2012年5月24日

5月7日午後3時頃から、アメフト部員75人によるバーベキューパーティーに参加し、飲酒。午後4時半頃、グラウンド脇の小屋で横になった。午後6時頃に他の部員が、うめき声などの行為を確認していた。午後7時45分頃意識がないことに気づき、病院に搬送されたが心肺停止状態であり、5月24日午後10時半頃、病院で死亡が確認された。 この時、急性アルコール中毒で搬送された人数は、意識不明で運ばれた1年生3名を含め9名で、内7名が未成年だった。8名は回復した。 1年生が先輩に焼肉を持っていくと酒をつがれ、残せないルールだった。警察の事情聴取によると、具合が悪くなったら小屋で休むように上級生から指示が出ていた。休ませる小屋の数を従来より増やしており、酔いつぶれる学生が多く出ると予想していたことを、アメフト部関係者は認めている。

慶應義塾大学(学年不明) 死亡日:2012年6月28日

6月27日夜、学外で行なわれたテニスサークルの懇親会で飲酒し、翌28日に死亡した。参加者同士で互いにあおりながら、短時間に大量の酒を飲んだ。死因は、イッキ飲みを繰り返すなどしたことによる急性アルコール中毒とみられる。

東京大学(学年不明) 死亡日:2012年7月28日

7月27日夕方ごろから、所属する運動系サークルの仲間十数人と学外で酒を飲んだ。翌28日未明に体調を崩し、急性アルコール中毒で搬送され病院で死亡が確認された。

鹿屋体育大学3年生 死亡日:2013年1月8日

1月8日午前0時半ごろから約1時間半、バレーボール部の後輩ら10人と誕生会を開き、学生寮前の芝生の上で飲酒した。8日が誕生日だった学生1人と、誕生日が近い2人を祝う飲み会で、この3人のみが、焼酎1升、テキーラ1本、ワイン3本を飲んだ。午前2時過ぎに学生5人で、酔った学生を自室へ連れて帰り、同じ宿舎に住む後輩が室内で約1時間付き添った。午前11時半ごろ、後輩が部屋を訪ねると学生は冷たくなっていた。死亡推定時刻は午前6時ごろ。死因は、吐しゃ物による窒息死と見られる。


●文部科学省が通知

未成年の飲酒禁止徹底を=文科省

文部科学省は29日、小樽商科大学(北海道小樽市)のアメリカンフットボール部の学生が飲酒し9人が病院に搬送され、19歳の男子学生1人が死亡した事故を受け、未成年者の飲酒禁止と飲酒強要防止の徹底を求める通知を全国の国公私立の大学、短大、高等専門学校に出した。学生が飲酒事故を起こさないよう指導などを要請している。


●女性の飲酒と健康

厚生労働省 eヘルスネット

女性はアルコールによる肝障害を来たしやすく、不妊、自然流産、乳がんの危険が高まります。妊娠中の母親の飲酒では、胎児性アルコール症候群を来たすことがあります。また短期間で依存が形成されることもあって女性のアルコール依存症も増加しています。


●イッキ飲み・アルハラ防止キャンペーン

遺族による「イッキ飲み防止連絡協議会」が1993年から、全国の大学にポスター、チラシなどを無料で配布するキャンペーンを続けています。キャンペーンは今年が21回目。ビール酒造組合など酒類業界が全面的に支援しており、ポスターなどのデザインやキャンペーングッズ製作もサントリーの関連会社サン・アドが無償で行なっています。昨年からはスマートフォンのアプリも無料配布しています。


●フジテレビとの話し合い

「めちゃイケ」酒豪企画、フジ社長「行き過ぎ」

2012年7月6日 読売新聞

フジテレビの豊田皓社長は6日の定例記者会見で、同局系バラエティー番組「めちゃ×2イケてるッ!」での出演者の酒豪ぶりを競う企画に対して市民団体から抗議を受けたことについて、「企画に行き過ぎた面があったことは否めない」との見解を述べた。抗議を受けたのは6月9日夜の放送。酒の一気飲みで子供を失った親などで構成する「イッキ飲み防止連絡協議会」など3団体が同18日、「危険なアルコールの飲み方を肯定し助長する内容」として、同局に文書で抗議していた。その後、双方が話し合いを行い、同局は社内でアルコール・ハラスメントへの理解を深めるための集会を開くことを決めた。豊田社長は「認識が足りなかったことは事実。今後は配慮しながら番組を制作する」と話した。


●韓国の女性人気グループがアルコールCMを断る

億単位のアルコールCMオファーを断る…“未成年に飲酒を助長させない

2012年12月18日

ガールズグループT-ARAが、ある酒類業者からのCM出演オファーを断った。 19日、T-ARAの所属事務所コアコンテンツメディア側によると、T-ARAは最近ある酒類業者から億単位のCMオファーを受けた。T-ARAは、19歳の最年少メンバーアルムを除くメンバー全員が成人しているが、このオファーを断った。

コアコンテンツメディア側は、断った理由として「現在、青少年の将来の夢の2位が芸能人であり、青少年のトレンドと文化に深く入り込んでいるアイドルグループのひとつとして、アイドルスターのダンスと歌、ファッション、行動を真似する青少年たちに飲酒を助長する可能性のある酒類CMへの出演は、適切ではないと考えた」と明かした。さらに「T-ARAは今後も、青少年に飲酒を助長する可能性がある酒類CMには出演しない」と話した。


●WHO「アルコールの有害な使用を低減するための世界戦略」

邦訳は右記URLからダウンロードできます。http://alhonet.jp/pdf/who2010.pdf

以上