2016年8月10日
キリンビール株式会社 代表取締役社長 宛
キリン氷結ウェブ限定アニメCMの中止を求める要望書
特定非営利活動法人アル法ネット
主婦連合会
8月2日に公開された貴社の「キリン氷結」ウェブ限定アニメCMを視聴して驚愕しました。テレビCMではありえない内容だったからです。ストーリー仕立てのアニメ。ゲーム・アニメ・SNS・声優アイドルなど若者文化を飲酒シーンにからめており、人気の声優を登用しています。登場人物は21歳の声優と25歳のイラストレーターの姉妹、21歳の男子大学生2人という設定。姉は自宅で仕事をしながら飲酒も。
明らかに若者層がターゲットで、未成年に大いにアピールする内容です。
実際、このCMが掲載されたYouTubeには、「未成年飲酒禁止されてるのに未成年が好きそうな内容でcm作るのはどうかと思うんだけど・・・」という視聴者のコメントがついていました。
貴社ARP室に強く抗議したところ、「ウェブCMは年齢認証ができるので、不特定多数を対象としたテレビCMとは異なる。この内容でテレビCMをやるつもりはない」「登場人物が25歳以上という自主基準はテレビCMに限定されている。ウェブCMには適用しないというのが業界の判断。そのため20歳以上の設定にした」との見解でした。
しかし、ウェブ上の年齢認証は絶対的なものではありません。
フェイスブックで特設サイトをシェアすると左のような絵柄が表示され、未成年のアカウントからもふつうに見ることができます。これだけでも大問題です。
クリックすると、「20歳以上ですか?」と表示されますが、単に「はい・いいえ」の選択があるだけです。
また今回のアニメCMは、ニュースサイトから年齢認証せずに視聴できました。
ウェブ上の年齢認証の徹底など不可能なのです。
「ウェブCMにもテレビCMと同じ基準が求められる」というのが、私たちの見解です。
「この内容でテレビCMをやるつもりはない」のなら、ウェブCMもやらないでいただきたい。
速やかな中止を求めます。
世界には、アルコールCM自体が法律で禁止されている国、飲酒シーンを自粛している国など、酒類CMに厳しい枠組みがあります。
日本の自主基準は世界に比べて非常に甘く、アルコール健康障害対策関係者会議でもその指摘が相次ぎました。そのため、酒類業界全体で改善を検討し、世界基準に少しでも近づけるために、7月1日の「酒類の広告・宣伝及び酒類容器の表示に関する自主基準」の改定につながったと評価していました。にもかかわらず、早々に、このような問題が出てきたのは残念です。
同基準には、「本基準の不断の見直しを行なうなど社会的な要請への更なる対応を期する必要がある」と記されています。ウェブCMは、かねてより検討課題になっていたはずです。
今回の経験をもとに、貴社には業界をリードして、ウェブCMの基準強化を図っていただくよう、強く望みます。
以上