【衣料部】子ども服の安全性(残留化学物質など)についての調査

主婦連合会衣料部では、2015年より子ども服の安全性(子ども服の紐の長さの危険性、高視認性子ども服の重要性など)確保のために、店頭調査や情報発信などを継続して行っています。
2020年度は、子ども服量販店・スーパーマーケットなどで試買した乳児・子ども用衣料品(スタイ・帽子・下着・ズボン・Tシャツなど24製品)の安全性(残留化学物質他)について、繊維関連の試験機関として国際認証『エコテックス®』を日本国内で唯一取り扱える一般財団法人ニッセンケン品質評価センターに依頼し「有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律」(以下、家庭用品規正法)による検査とエコテックスⓇスタンダード100による検査項目(フタレート、フッ素化合物、pH、アルキルフェノール類など)による検査を行いました。

1.目的
日本で販売される繊維製品は家庭用品規正法によって管理されています。日本で販売される衣料品の95%以上が海外で生産され輸入されているのが現状です。縫製工場については管理がなされていても、染色加工場、生地メーカー、原糸メーカーなどでどのような加工がされているかの管理ができていないことも考えられます。繊維業界は世界で生産される化学物質の25%程度を使用しているという情報もあるなかで、日本国内で販売されている子ども服等繊維製品が国際レベルの有害化学物質規制と比較した場合にどの程度クリアできているかを確認するために試買試験を実施しました。

2.試験
実施した試験項目は、家庭用品規正法により規制されているホルムアルデヒド・特定芳香族アミンについての検査のほかに、エコテックスⓇスタンダード100付属書4(製品クラスI~IV)による検査を採用して、商品の素材、染色加工、機能性情報などをもともに、フタレート、フッ素化合物、pH、アルキルフェノール類の試験項目についても検査しました。また、製品の品質表示、仕様についても確認しました。

 

 

 

 

 

3.結果
ホルムアルデヒド・特定芳香族アミンに関しては、24製品すべてがクリアしていました。エコテックスⓇスタンダード100付属書4(製品クラスI~IV)による検査では、5製品(スタイ2種・シャツ・靴下・てぬぐい)において3項目(アルキルフェノール類・pH値・フタレート)がエコテックスⓇスタンダード100の基準をクリアしていませんでした。
▶クリックにて表(PDF)を表示します

4.結果解析(エコテックスⓇスタンダード100による)
・アルキルフェノール類※毒性:内分泌攪乱物質(製品No. 6スタイ・No.24てぬぐい)
仕上げ加工で使用される薬剤に含有している、または、染色や仕上げ加工後の洗い工程に使用される薬剤の成分が残留している可能性があります。

・pH値※毒性:皮膚刺激性(製品No. 14シャツ, 20スタイ)
染色や仕上げ加工などの工程に使用される薬剤や後処理による影響と推測されます。

・フタレート※毒性:内分泌攪乱物質(製品No. 16靴下)
靴下の滑り止め部分の樹脂の可塑剤として使用されている可能性があります。

5.考察

先進国にはそれぞれ商品に対する規格があります。規格に適合しなければ販売できません。海外の規格にはISO(国際標準化機構)、AATCC(米国繊維化学・色彩研究者協会)、ASTM(ASTMインターナショナル)、CFR(米国連邦規制)、AS(オーストラリア規格協会)、BS(英国国家規格)、EN(欧州規格)、DIN(ドイツ連邦規格)、GB(中国国家標準)などがあります。

 欧州議会・理事会規則(EC)No. 1907/2006「化学物質の登録、評価、認可および制限に関する規則」(REACH規則)に基づき製品中に含まれる化学物質は発がん性、有毒性、残留性の観点より当該物質の使用の禁止や使用用途での届出、認可が必要となります。特に繊維製品関連物質としては、アゾ顔料・染料、フタル酸エステル(PAE)(合成皮革のジャンパーやTシャツのプリント部分など可塑剤として樹脂に添加される可能性)について含有の有無の確認が必要です。

日本では「特定芳香族アミン規制」が2016年4月1日に施行されました。これは欧州のリーチ法、中国のGB法、韓国のKC法、エコテックスなど、世界的に特定芳香族アミン類を有害物質に指定する動きを受けたものです。

アゾ染料は種類が豊富で安価なため、世界で3千種類以上が使用されていました。これらのアゾ染料の一部は皮膚表面や腸内の細菌、肝臓などで還元分解され、発がん性、またはそのおそれがあると指摘されている特定芳香族アミンを生成する可能性があることがわかっています。1994年にドイツが繊維製品に対して特定のアゾ染料の使用を世界で初めて禁止しました。 特定芳香族アミン物質には、4―アミノアゾベンゼン、2―アミノ―4―ニトロトルエン、4―アミノビフエニルなど24物質があります。 こうした有害化学物質対象は毎年増加しており、メーカーや輸出業者は注意をはらっています。

日本で売られる繊維製品も安全・安心でなければなりません。ホルムアルデヒド・特定芳香族アミンだけではなく、ISO規格にある重金属などの有害物質試験も行われる必要があると考えます。

6.総括
繊維製品の安全性は消費者や製造現場で働く人々にとって、大変重要です。より一層の国際レベルの有害物質規制に対応する安全・安心なものづくりを要望します。

(エコテックスⓇ日本公式サイトhttps://oeko-tex-japan.com/