【パブコメ】消費生活基本計画工程表の改訂素案(令和5年3月)に関する意見

2023年4月7日

消費生活基本計画工程表の改訂素案(令和5年3月)に関する意見

主婦連合会

消費者基本計画工程表改定素案についてはこちら

 

全体への意見

「消費者基本計画工程表」から昨年度度版までにあった359項目の施策を削り、14の重点項目のみに置き換わっている点については強く反対する。従来の工程表の施策の各論は維持・継続するべきである。各論部分を残した上で、重点項目部分をアップデートした形で作成し、その部分のみをパブリックコメントの対象にするということであれば納得できる。

消費者基本計画は消費者行政についての見通しを網羅的に把握できるものである必要があり、工程表には基本計画本体の各論として行政全体の各施策が存在し、公表され、その実施状況が検証されるべきである。今後工程表が今回の案のような形となった場合、消費者行政全体の計画としての役割が大きく後退し、消費者基本計画の存在意義が失われる。

また、今回の重点項目のまとめ方はあまりにも簡素化しすぎている。重点項目は、「消費者基本計画」本体の「第5章 重点的な施策の推進」に掲載された項目を網羅すべきである。時代の進展により新たな消費者問題の項目が必要になれば、柔軟に加筆するなどの対応をしていくことが望ましい。

 

1.消費者事故等の情報収集及び発生・拡大防止

・消費者の安全の確保に関連する重点項目が「消費者事故等の情報収集及び発生・拡大防止」のみになっているのは極めて不十分である。全体意見とも重複するが、「消費者基本計画」本体の「第5章 重点的な施策の推進」の「1.(1)消費者の安全の確保」に対応するかたちで重点項目を充実させるべき。今回の案では、事故情報の収集と消費者への注意喚起のみが施策の重点とされ、消費者の安全に関する施策の最終目標が「消費者の行動変化」のみとなっており、極めて不十分。  

前述の通り項目を充実させ、目標や指標には、少なくとも「製造事業者等による適切な対応」、「関係府省庁における製品・サービスの技術基準の改正や規制等の強化」に関して掲載されるべきである。

・消費者事故の情報収集の充実に関し、入力データの質の向上について取り組む内容について明記すべき。

 

2.特定商取引法の執行強化等

・特定商取引法(以下、特商法)及び預託法を厳正かつ適切に執行することは重要であり、賛同する。

・悪質商法による消費者被害は減少しておらず、また急速に進むデジタル化に伴ってますます複雑化していることから、特商法の抜本的な見直しが必要であり、それに向けた検討に関する取組みについて加筆すべき。

・特商法の契約書面の電子化について、施行2年後の見直しに向けて工程表に反映させるべき。

 

3.社会経済情勢の変化に対応した消費者契約法を含めた消費者法制の整備等

・昨年12月に成立した改正消費者契約法及び不当寄付勧誘防止法について、今後の見直しを見据えた取組み方針について工程表に記載すべき。

 

4.景品表示法の厳正な運用及び執行体制の強化

・インターネット上の広告に関する取組みについて、アフィリエイト広告及びステルスマーケティングに関する施策の効果を検証し、引き続き課徴金制度などの課題について検討することを工程表に記述すべき。

・エシカル消費に関連して、事業者のエシカルな取組みについての説明、主張、表示が公正であることはエシカル消費実践の大前提である。この点を景表法の観点から記述すべき。

 

5.食品表示制度の 適切な運用と時代に即した見直しの検討

・インターネット販売における食品に関する情報提供について、国際的なルールを踏まえつつ、消費者に分かりやすい制度となるよう更なる取組みを求める。

・インターネット販売における食品表示のあり方については、まずアレルギーなど安全性に直結するものから表示の義務化を図るべきであり、そうした方向性、検討の工程を記載すべき。

・偽装表示をなくすためにも有効な、産地情報・生産履歴の保持・伝達(いわゆるトレーサビリティ制度)をどう食品全体に広げるかについて、積極的に検討することを記述すべき。

・保健機能食品及び特別用途食品に関わる制度全体の課題整理と、抜本的見直しのための検討の工程を記述すべき。

 

6.高齢者、障害者等の権利擁護の推進等

・成年後見制度について、活用の周知だけではなく、消費者から利用について意見を集め、利用しやすい制度となるよう改善の検討について記述すべき。

 

7.成年年齢引下げに伴う総合的な対応の推進

・成年年齢引き下げに関連する取組みは、引き続き各省庁が連携した実践的な取組みを明記し、社会経験の少ない若者や周りの大人に対しての施策の遂行につなげるべき。その上で消費者被害の状況把握を行い、被害防止策の改善を行うことを明記すべき。

 

8.消費者団体訴訟制度の推進

・「消費者裁判手続特例法等に関する検討会報告書」において将来の検討課題とされた事項について、具体的に工程表に記述すべき。

 

9.食品ロスの削減の推進に関する法律に基づく施策の推進

・食品ロスの削減の推進にあたり、賞味期限及び消費期限の関する消費者への周知についても工程表に明記すべき。

 

10.エシカル消費の普及啓発

・真に社会のためになるエシカル消費が行われるには、事業者のエシカルな取組みについての説明、主張、表示が公正であることが大前提である。この点の取組みをセットにしなければ、エシカル消費の正しい普及は実現できない。この点を加筆すべき(景表法の項目への加筆も必要)。

・エシカル消費の普及には、認証エコラベルについての活用度などを把握することが重要であることから、水産エコラベルだけではなく、他のものについてもKPIとして記述すべき。

 

11.公益通報者保護制度を活用したコンプライアンス確保の推進

・相談窓口の充実とともに、寄せられた相談の分析を行い、制度の改正について検討することを記述すべき。

 

12.デジタル・プラットフォームを介した取引等における消費者利益の確保

・インターネット上の広告の規制について、インフルエンサーに対する理解促進の研修や意見交換を行うことを記述すべき。

 

13.消費者教育の総合的、体系的かつ効果的な推進及び地域における消費者教育推進のための体制整備

・デジタル化の進展に伴い、全世代に対して情報リテラシーや多様化する決済手段に関しても消費者教育として取り上げていく必要がある。よりわかりやすい消費者教育ポータルサイトでの情報提供、消費者教育コーディネーターの積極的な配置・育成を実施し、取組みの効果をKPIとして位置付けるべき。

 

14.地方消費者行政の充実・強化、消費生活相談のデジタル化に向けた地方公共団体への支援等

・消費生活相談員の担い手確保のために、人材育成や処遇改善について地方公共団体による取組みを支援する検討を行うべき。特に、相談員の高齢化は課題であり、若年者に向けた取組みは重要であることから、具体的な取組みについて明記すべき。

・消費生活相談のデジタル化は、相談内容が迅速に施策に生かすことができる仕組み作りを行うことを記述すべき。

 

以上