【意見書】健康・環境被害防止のためネオニコチノイド系農薬の販売・使用の禁止に向けて早急な規制措置を求めます

 申し入れ・要望2023年12月8日

厚生労働大臣
農林水産大臣
消費者庁長官 

健康・環境被害防止のため
ネオニコチノイド系農薬の販売・使用の禁止に向けて
早急な規制措置を求めます

主婦連合会

 ネオニコチノイド系農薬は農作物だけでなく身近な家庭菜園などにも使用されています。この農薬は殺虫・防虫・害虫駆除を目的に、「少量でも効果があり、その効果が長く続く、しかも人には低毒性」という「利点」を謳い文句に、身近な農薬として適用範囲も拡大され、この20年間、大量に販売・使用されてきました。
 しかし、国内外の研究によって生態系に有害作用を与え、各種疾病の原因物質ではないかとの指摘が多く報告されており、毒性リスクが高く、早急な規制が必要な問題農薬であることが明らかとなっています。EUでは2018年にネオニコチノイド系農薬のうち多く使用されている「イミダクロプリド」「チアメトキサム」「クロチアニジン」の3剤を屋外での使用禁止としました。米国でも規制へ向けた議論が進んでいます。
 一方日本では、この間ネオニコチノイド系農薬の規制緩和が推進されています。ネオニコチノイド系農薬の一つで欧米でも現在使用されている「アセタミプリド」の残留基準値を例にすると(尚、フランスでは「アセタミプリド」は使用禁止)、2021年3月現在、イチゴ、リンゴ、ナシ、ブドウ、スイカ、メロンでは、日本の残留基準値はアメリカに比べ2倍~14倍、EUとの比較でも5倍~10倍に設定されています。野菜の場合、トマト、キュウリ、キャベツ、ブロッコリー、ピーマンではアメリカの4~10倍です。茶葉に至ってはEUの実に600倍となっています。
 ネオニコチノイド系農薬の毒性と日本の使用実態に関する(一社)農民連食品分析センターの研究によると、2023年3月から10月まで尿中ネオニコチノイド系農薬の検出調査が実施され、その結果、検査対象となった消費者(377人)の9割以上(357人)の尿からネオニコチノイド系農薬が検出されました。広範囲に人体への汚染が進んでいることがわかります。この農薬は浸透性が高いことから、みかんを例にとれば皮だけでなく中身にまで染みこむ性質があり、皮を剥いても人体への摂取を防げません。
 このような各種研究や汚染実態調査を踏まえ、主婦連合会はネオニコチノイド系農薬の販売と使用を禁止することを求めます。過渡的には、EU並みの規制措置を早急に採用することを求めます。

1. ネオニコチノイド系農薬の人体・生態系への有害性に関する国内外の研究成果を尊重・重視し、販売・使用の禁止に向けて早急に検討を進めること。

2. 過渡的には、残留基準値を含め、EU並みの規制措置を早急に採用すること。

3. 水道水からの検出事例があることから、飲料水・食品だけではなく、環境などにも幅広い汚染が広がっていることを重視し、環境汚染の実態調査を実施すること。

4. その調査と同時並行に、健康被害の実態を調査・分析し、健康被害防止への適正な対応を図ること。

以上