【意見書】消費生活基本計画工程表の改訂素案に関する意見

申し入れ・要望

2024年4月15日

消費生活基本計画工程表の改訂素案に関する意見

主婦連合会

全体への意見

「消費者基本計画工程表」から令和4年度版までにあった359項目の施策を削り、14の重点項目のみに置き換わっている点については、引き続き強く反対する。従来の工程表の施策の各論は復活させるべきである。

理由:消費者基本計画は消費者行政についての見通しを網羅的に把握できるものである必要があり、工程表には基本計画本体の各論として行政全体の各施策が存在し、公表され、その実施状況が検証されるべきである。

重点項目が消費者庁の所管するものに偏り過ぎており、消費者行政全体の工程表になり得ていない。

消費者問題は多岐にわたっているが、重点項目以外の項目についての工程表及び評価が掲載されていないため、進捗状況がわからず、意見を言うことができない。現状の工程表では、消費者行政全体の計画としての役割が大きく後退し、消費者基本計画の存在意義が失われる。全体像を公表することによる透明性の確保が重要である。

 重点項目が昨年度と全く同一であるが、消費者問題は次々と新しい課題が発生し、流動的である。この形式には昨年(令和5年度改訂)から変更されたが、今回以降、工程表の重点項目を変更すると以前の重点項目は追えなくなるということになる。重点項目は必要に応じて追加していくという運用なのか、それとも固定されているのかが見えないが、いずれにしてもこの形式には問題がある。以前の方式に戻すべきである。

 

重点項目1.消費者事故等の情報収集及び発生・拡大防止

・事故情報の収集と消費者への注意喚起に重点が置かれ、消費者の安全に関する施策の最終目標が「消費者の行動変化」のみとなっており、極めて不十分。  

・目標や指標には、少なくとも消費者安全に係る「製品・サービスを提供する事業者による適切な対応」、「関係府省庁における製品・サービスの技術基準の改正や規制等の強化」に関して掲載されるべきである。

・消費者事故の情報収集の充実に関し、入力データの質の向上について取り組む具体的内容について明記すべき。

・消費者の身体生命に関わる消費者事故の発生・拡大防止は、消費者庁のみで取り組めることではない。消費者庁の所掌範囲内に納めようとするあまり、極めてカバー範囲の狭い目標・取組となっている。関係各省庁を含めた取組が重点項目の中に書かれるべき。

・消費者庁によるLINE、インスタグラムは発信の頻度が少なく、フォロワーも少ないため、認知を高める必要がある。スピード感のある注意喚起・被害の未然防止につながるよう、媒体の特性を重視した更なる取組について記載すべき。

 

重点項目2.特定商取引法の執行強化等

・悪質商法による消費者被害は減少しておらず、また急速に進むデジタル化に伴ってますます複雑化していることから、特商法の抜本的な見直しが必要であり、それに向けた検討に関する取組みについて加筆すべき。

・特商法の契約書面の電子化について、見直しに向けて工程表に反映させるべき。

 

重点項目5.食品表示制度の 適切な運用と時代に即した見直しの検討

・保健機能食品制度に関しては、「普及啓発・理解促進」が柱で「保健機能食品が健康の維持等に与えた影響を把握する」等が記載されているが、危機感が不足していないか。機能性表示食品の重大事故を教訓に、この分野全体を大きく見直していく方向性の記載が必要。

・産地情報・生産履歴の保持、伝達(いわゆるトレーサビリティ制度)の推進に向けた取り組みを記載すべき。

・ゲノム編集技術について記述があるが、ゲノムをはじめ新技術を応用した食品については慎重に取り扱うとともに消費者の選択の権利に資する表示の実現に努める等の記述を入れるべき。

・加工食品の原料原産地表示制度について、「国内製造」「輸入」という表示は原料原産地がわからないなどの問題がある。見直しについて記述すべき。

 

重点項目10.エシカル消費の普及啓発

・「水産エコラベル」が掲げられているが、エシカル消費に結びつく商品としては「フェアトレード」、「FSC認証」、「レインフォレスト・アライアンス認証」などもある。「水産エコラベル」以外のエシカルな商品の普及についても掲載すべき。

・エシカル商品の流通量を増加させることが重要。指標を設定すべき。

・「プラスチック・スマート」の認知度や行動変容などについて指標の設定をすべき。

 

重点項目12. デジタル・プラットフォームを介した取引等における消費者利益の確保

・ネット上の広告規制、誹謗中傷等有害情報への規制の強化に関係省庁あげて取り組む必要があり、そのような記載を追加すべき。

 

その他

・身近な化学物質に対する消費者の知識や対策に関する取り組みの掲載が不足している。消費者製品に使用されている化学物質についての分かりやすい情報伝達の仕組みの構築、消費者への注意喚起、知識の提供についても取り上げ、工程表に記載すべき。

・食品に関して、食品表示と食品ロスの観点のみが重点として取り上げられているが、食品の安全性に関するリスク管理・リスクコミュニケーションについての記載が不足している。

・食品衛生基準行政が消費者庁に移管されたが、取組の内容が不透明である。記載が必要。

・電気・ガス小売り供給の取引適正化、電気通信サービスの消費者保護等、生活になくてはならないインフラについて取り組みの記載が不足している。

・脱炭素社会に向けたライフスタイルを実践していくために、エシカル消費に限定されない、関係各省庁による具体的な施策を追加すべき。

・初期、中期、最終がどの年(範囲)を示しているのか記載した方がわかりやすい。

 

以上