【要望書】《原子力発電所事故に関する要望書 その2 放射性物質の汚染に関する対応についての要望》

申し入れ・要望

2011年4月13日

内閣総理大臣 宛

原子力発電所事故に関する要望書 その2 放射性物質の汚染に関する対応についての要望

主婦連合会

政府は4月12日、福島原子力発電所の事故について、国際評価尺度で「レベル7」という「チェルノブイリ」と同等の深刻度を示す事故であることを明らかにしました。レベル7に相当する放射性物質の大量流出はすでに3月16日には判明していたことも報道されています。 判断遅れが、対応遅れとなり、いっそう取り返しのつかない事態を招いていないか心配されます。これまでの政府の説明は常に根拠が希薄な「楽観論に基づく安全主張」を基本にしており、最悪の事態を想定してその未然防止を図る危機管理とは相入れないものです。

 今は、高濃度放射性物質の大気・海への放出により、農産物や飲料水、近海の魚介類が汚染され、それが日常的に検出されるという異常事態です。政府は、放射性物質を大気や海に放出しても「拡散されて薄くなる」とし、野菜、飲料水、魚介類から高濃度検出されても、「直ちに健康への影響はない」「食べても心配はない」「冷静な対応を」と消費者・国民の当然の心配を否定する説明を繰り返してきました。適正な情報を提供せずに、食物連鎖や生物濃縮という科学的事実も否定し、かえって消費者に不安・不信感を与えてきた、と思わざるを得ません。

 事態の収拾には原子力発電所の事故の終息が何よりも必要です。しかし、そのために放射性物質の環境放出を最初から前提にしているとしたら、それは大きな間違いです。近隣住民、農畜産漁業関係者をはじめ、全国の消費者が「許しがたい行為」として怒るのは当然です。

 主婦連合会は、原子力発電所事故による人工放射性物質が、すでに1カ月以上も広範囲にわたり拡散・降下し、大気・土壌・海を汚染し、食品、野菜類、魚介類、そして人を汚染していることを重視し、次のような抜本改革を検討するよう要望します。  

【要望事項】

1. 速やかに消費者・国民に「レベル7」に関する健康・環境への影響について、汚染状況に基づき重大性を説明して下さい。原子力発電所からの放射能の「封じ込め」が実現していない中では、野菜、魚介類をはじめ、今後も食品への汚染が問題になります。「直ちに人の健康に影響を与えない」などの説明は、すでに1カ月以上にわたり異常事態を体感している消費者・国民には納得できるものではありません。

2. 当面の措置として、汚染された農畜産物や魚介類を国が全量買い上げ、回収し、農畜産業・漁業関係者に万全な補償をすることを宣言し、実施して下さい。事故が発生し、放射性物質が環境に幅広く放出・拡散している現在、被害者の支援と今後の被害の拡大防止へ向けた政府の姿勢を明確に打ち出すことこそ重要です。

3. 急きょ発表された魚介類の規制値について科学的根拠をきちんと説明して下さい。他の規制値設定のあり方にも重大な課題を投げかけています。

4. 自治体や国の検査体制を整備・強化し、検査品目を幅広く統一化し、検査地域を指定し、その結果をすべて公表して下さい。その際には、検査地域や産地名も公表し、風評被害の発生を防止して下さい。

5. 放射性物質で汚染された食品の摂取による内部被ばくには、「これ以下なら安全という基準値がない」と指摘する専門家もいます。一方「まだ明確ではない」という専門家もいます。私たちは、研究しても、なお現在もその結果が明確ではなく、不透明な場合には、安全を第一に考えての、予防原則をもとにした施策導入が必要と考えます。特に、影響が成人よりも強いと指摘される乳幼児や妊産婦については、この予防原則に基づく暫定規制値の設定をはじめ、避難地域の拡大など、各種の保護策を早急に採用して下さい。

6. 厚生労働省がまとめた「妊娠中の方、小さなお子さんをもつお母さんの放射線へのご心配にお答えします」というパンフレットには、規制値を「安全基準」であるかのように消費者を誤認させる記述があります。また、乳児用乳製品の規制値が成人の3倍厳しく設定されているのにその点を配慮していない記述も目立ちます。内容を正確に記載するよう同パンフレットの見直しを図ってください。

7. 原子力発電所の事故は、それ自体が異常事態です。一大事であることを踏まえ、国は健康被害に関する情報収集・分析を強化し、消費者・国民に適正な情報を一元的に提供する体制を早く構築して下さい。

8. 検出された各種の微量放射性物質のリスクについて丁寧に説明し、原子力発電の建設を推進してきた専門家だけではなく、遺伝学・生物学や消費者・国民の健康問題を研究してきた専門家の意見にも、もっと耳を傾けてください。

9. 事故の終息へ向けて懸命に作業されている方々の健康調査・管理はもとより、将来的な措置として、今回の事故に関する住民・国民への健康調査・管理を継続的に実施する方針を打ち出してください。

以上