【要望書】《地上アナログテレビ放送の停波延期の要望》

申し入れ・要望

2011年5月18日

内閣総理大臣
総務大臣 宛

地上アナログテレビ放送の停波延期の要望  

主婦連合会

 東日本大震災を受けて政府は、被災地である岩手、宮城、福島の3県で最大1年間のアナログ停波延期を決定しました。

 しかしながら、被災地3県に限ることなく、全国的に普及の実態は、今年3月に総務省が発表した地デジ受信機世帯普及率95%よりも、10%程度、あるいはそれ以上低いということは、様々な民間の調査により明らかとなっています。

 総務省が行っている浸透度調査の問題点については、その調査方法によって、回答者に地デジ対応に協力的な世帯が高い割合で含まれることや、都道府県別のサンプル数が200前後しかない県が多数あること、そして80歳以上の世帯が調査対象に入っていないことなど、調査結果が実態を反映していないと社会調査の専門家から指摘されています。

 しかも、上記浸透度調査で「世帯普及率」として発表されている95%という数値は、地デジ対応受信機(録画機等を含む)を持っている人の割合です。地デジの放送を見るには、?電波が届いていること、?その世帯が電波を受ける装置(アンテナ等)を持っていること、?地デジ対応受信機を持っていること、のすべてが必須条件です。どれかひとつが欠けていても地デジは見ることができません。総務省が発表している世帯普及率は、このうち?の条件のみを満たしている世帯を示しているにすぎません。総務省の調査ですら、上記3つの条件がそろっている、すなわち「地デジを見ることができる」世帯は約90%となっています。

 また、経済的弱者に対する支援施策も、受けるべき人々に行き届くには程遠い状態にあります。

 上記に照らして、総務省の最新の調査の後の半年間に普及した数字を勘案しても、現時点で「地デジが家で見られる」という状態にない世帯が、少なくとも約500万世帯は存在することが確実です。

 このことは、福島第一原子力発電所の事故が収束せず、放射能汚染被害が今後どのように推移するか誰にも予測できない中、国民の生命、健康、財産を守るための生きた情報を、テレビから得ることができない人々が、このままでは一千万人以上という規模で出てくるということを示しています。その中にはとりわけ、経済的、体力的、また技術に対する理解力的に弱者である人々が多く含まれ、情報を得るための代替手段(インターネットなど)を持たない人々の割合が極めて高いことは間違いありません。

 憲法は国民が情報を受ける権利、文化的な最低限度の生活を営む権利を保障しています。7月24日にアナログ放送停波を実施すれば、多くの国民にとってその権利を侵害されたことになります。

 今回の大震災では、人々が助け合い、支え合って生きることの大切さを、国内のみならず全世界の人々に改めて強く印象づけました。また、人災であるところの原発事故が明らかにしたことは、国民の平穏な生活を第一に考えた施策を行ってこなかったことが、大変な被害の拡大を招いているということです。

 地上波のテレビ放送は、国民の財産である電波を使った、公共性の極めて高い基幹放送です。今、そのデジタル化という大事業の仕上げの段階であることは間違いありません。その大事な時期に、多くの国民を切り捨てることなく、柔軟な対応により、温かく血の通った施策を展開されることを、心より要望いたします。

要望事項

1. 2011年7月24日に予定されている地上アナログ放送の停波を、被災地3県に限ることなく、全国で延期すること。

2. 最終的な停波の具体的な方策については、全国一律でなく、無理なく停波できる地域から停波するなど、柔軟な対応を検討すること。

3. 停波してもよいという判断基準を、あらかじめ定めて公表し、それに従って停波を行うこと(その際、従来の総務省の浸透度調査では実態把握はできていないことを前提とすること)。

以上