【意見書】《リコール基本法制定など消費者事故拡大防止のためのリコール体制を早急に整備・強化して下さい》

申し入れ・要望

 2013年2月25日

消費者担当大臣
経済産業大臣
厚生労働大臣
農林水産大臣
消費者庁長官
消費者委員会委員長 宛

リコール基本法制定など消費者事故拡大防止のためのリコール体制を早急に整備・強化して下さい

主婦連合会

消費者委員会は2月12日、消費者の安全性確保を保証するため「消費者事故未然防止のための情報周知徹底に向けた対応策についての建議」をまとめ、消費者担当・森まさこ大臣、経済産業省・茂木敏充大臣に提出しました。リコール漏れ製品による重大事故を含む二次被害が年間100件以上発生していることから、国や自治体がとるべき連携施策、販売事業者の自主的取り組みの促進、消費者への啓発活動の推進などを関係省庁に「建議」したものです。

しかし、「建議」の内容は、施策の対象を消費生活用製品に限定し、年間900件ものリコールがある食品や、施設・役務(サービス)などを対象外としています。そのため極めて狭い範囲での「建議」となっており、食品、製品、施設、役務などの全般的リコール体制が問題になっている中で、もっとも必要な現行法の改正と法的整合性の確保をはじめ、私たちが求めてきた「リコール基本法」(仮)の制定も先送りにされています。

長崎県での高齢者施設におけるリコール漏れ加湿器が火元とされる火災事故や介護ベッドに関係した30件以上もの相次ぐ死亡事故発生に示されているように、事業者・事業者団体の自主的取り組みだけでは限界のある分野があることも心配される中、厳正な法執行と新たな法制度、その環境整備へ向けた早急な対応が求められます。

今回の消費者委員会の「建議」は、法執行体制の強化・整備では即効性・具体性に欠け、「いわゆる健康食品」への対応については、結果的に様々な施策が先延ばしにされる可能性があるものばかりです。以下、「建議」の問題点とともに主婦連合会の要望点を提起します。

主婦連合会では、緊急を要する深刻事態の中で、消費者委員会の「建議」内容は、従来の取り組みの強化要請に重点を置いている点で実効性に乏しく、このままでは消費者被害はなくならないと考えます。そこで、以下のような「建議」の問題点を指摘しつつ、それに加えて「取り組むべき施策」について、迅速な検討・導入を求めます。

【「建議」の主な問題点】

1.「建議」は消費生活用品に絞って安全性情報の伝達方法を提起したもので、食品、施設、役務(サービス)を対象外としています。その理由も記載されていません。特に、年間700件から900件もの回収が発生している食品について検討を先延ばしにしたことは重大問題と言えます。消費生活用製品と食品とのリコール対応には商品特性から異なる分野があり、今回の製品の範囲を絞った「建議」はリコール対応の「すき間」をさらに拡大させることにつながりかねません。

2.リコール対応については、事業者の自主的取り組みの整備推進や、消費者の認識の向上以上に、行政の対策が強く求められていることは、最近の消費者事故発生事例が教えています。今年に入ってからのリコール漏れ加湿器が火元とされる高齢者施設の火災・死亡事故や介護ベッドに関係した死亡事故の発生は、それまでの注意喚起情報の経緯を考えると、行政による法的措置の必要性を端的に示しています。にもかかわらず、「建議」は、現行の情報提供のあり方、その延長上での改善に依然として依拠し過ぎています。

3.消費者安全法の重大事故通知情報は、消費生活用製品安全法と異なり、公表段階で製品・商品・施設名や事業者名は伏せられています。消費者に伝えるべき商品名情報の公開などが保証されていないこと、適切な消費者への情報提供・伝達内容に法制度上の違いがあること、事故情報の収集ルートも異なるこれら二つの法律に多くの不整合があること、などを問題にせず、改善しようとしない姿勢の「建議」では不十分です。現行の消費者安全法と消費生活用製品安全法の改正が必要です。

4.リコールの一義的責任はメーカーや販売業者にありますが、日本ではその法的責任が軽視されてきたのがこれまでの経緯です。そのため事業者間で対応にアンバランスが生じ、その課題が長年指摘され続け、しかも、行政がその状態を放置してきたのが今日の実態です。「建議」はこのような事業者の通知義務をはじめ行政の責任、役割を法的に位置付けることを回避していることで、全ての消費生活関連製品・商品・施設・役務の分野でのリコール対応のアンバランスを一層、助長していくものと思わざるを得ません。

主婦連合会では、以上の「建議」の問題点を踏まえ、「建議」に盛り込まれた事業者による取り組みの推進とともに、それに加えて、以下の施策を早急に検討・導入すべきことを要望いたします。

【建議に加え、取り組むべき施策事項】

1.介護ベッドや加湿器による事故など、リコール漏れ製品による事故をこれ以上発生させないために、消費生活用製品安全法に基づく「危害防止命令」を機動的に発動するよう要請すること。

2.一向に改善されない食品のリコール社告については、農水省が2011年6月6日に発布した通知を事業者が遵守するよう、早急に関係官庁が措置すること。

3.製品、商品、施設、役務(サービス)等の全般的リコール対応について、分野ごとの特性を踏まえ、対応体制の総合的整備を図ること。

4.その一環として、消費者の権利を明記し、国、事業者、地方自治体、各関連機関の責任と役割、義務を盛り込んだリコールに関する総合的・全般的な「リコール基本法」の制定を図ること。

5.その「リコール基本法」に沿う形で、関連法の改正作業を同時に進めること。

6.また、早急に、消費者安全法と消費生活用製品安全法の改正に着手し、情報収集・分析・発信・提供にあたっての双方の法的不整合な箇所を点検し、整合化すること。

7.安全性情報を届けられるべき消費者に適正に届けるための、中央・地方を結んだ「安全ネットワーク」を構築すること。安全ネットワークは、少なくとも、高齢者・障害者・乳幼児問題などに関与する団体・機関・施設、病院等医療機関、学校関連機関、消費生活センター、消費者・市民団体などが参加する網羅的な仕組みとすること。

以上