【パブコメ】「今後の原子力政策の方向性と行動指針(案)」に対する意見

2026年7月9日

「今後の原子力政策の方向性と行動指針(案)」に対する意見

主婦連合会

[意見1]

・該当箇所

4ページから5ページ目「(0)原子力発電の見通し・将来像」に記載の数値目標

・意見内容

示されている原子力発電所建て替えの数値目標は、その根拠となる将来の電力需要増予測や、考慮すべき他の要素が精査されておらず、記述を見直すべきです。

・理由

省エネの進展、再生可能エネルギーの技術進化、また、日本の急速な人口減少等も要素に入れ、複数シナリオの提示がなされるべきです。

日本列島は多くの断層の上に位置し、世界で最も地震の多い国です。今後数十年の間に日本の広範囲で巨大地震が起こる確率は極めて高いと専門家も国も警鐘を鳴らしています。国民の生命身体及び財産の被害、国土の汚染など、過去の事故も踏まえれば、原子力発電を重要電源として今後も推進していく政策そのものが見直されるべきです。

仮に建て替え等を計画する場合であっても、原発が持つその高いリスクに対応するために、建設費用が一層増大することは必至であり、その観点からの検証がなされることなく、政策を推進すべきではありません。経済活動を支えるためと称して、経済性のない政策を推進するのは矛盾しています。

 

[意見2]

・該当箇所

6ページ目 (1)原子力を長期的に活用していく上での大前提

・意見内容

リスクマネジメントの前に、正確なリスクアセスメントが必須です。それには原発のバックエンドプロセスにおけるリスクについても含まれるべきです。

・理由

国民の生命・身体・財産の安全確保の観点から、まず原子力発電事業におけるリスク全体のアセスメントが行われるべきです。世界全体の活火山の約7〜10%が集中する世界有数の火山大国であり、世界で一番地震の多い国である日本において、原子力発電所のリスクをもう一度精査し、アセスメントすることなしに、長期活用、建て替え、新設を計画すべきではありません。不十分なリスクアセスメントを基にリスクマネジメントをしたとしても、国民の安全を確保することはできません。

また、「大前提」となる安全性確保には原子力発電のバックエンドプロセス(使用済燃料の処理・処分や原子力施設の廃炉等)の安全性確保も含まれなくてはならず、これも、精緻なリスクアセスメントに基づくものでなくてはなりません。その結果に基づいて、国民の安全を最優先とした将来のエネルギー政策の方向性を決定することを強く求めます。

 

[意見3]

・該当箇所

12ページ 二つ目の※

・意見内容

フュージョンエネルギーについて、指針本文への記載を求めます。

・理由

フュージョンエネルギーについては、核融合反応が原子力基本法上の「原子力」に含まれると解されているにもかかわらず、現行の整理においては原子力政策との関係が十分に明示されていません。また、利用の過程においては三重水素の取扱いや中性子による設備の放射化などが生じるとされており、放射性物質および放射性廃棄物に関わる課題を内在しています。

こうした性質を踏まえれば、フュージョンエネルギーを原子力政策から切り離して扱うことは適切ではなく、原子力政策の一環として明確に位置付け、本指針において体系的に整理することが不可欠です。この点が曖昧なままでは、原子力政策全体の整合性を損ない、政策判断の前提自体が不透明になるおそれがあります。

さらに、内閣府の「フュージョンエネルギー・イノベーション戦略」においては、将来のエネルギー源としての期待が示される一方で、技術開発段階にあることや、安全確保、社会実装に向けた制度整備など、多くの課題が残されていることも明らかにされています。これらの課題を踏まえないまま、期待される効果のみが強調されることは不適切です。

したがって、フュージョンエネルギーについては、開発・導入に伴う国民負担の可能性や、技術的・制度的な不確実性、さらにはリスクについても明確に示す必要があります。その上で、原子力政策全体の中での位置付けを明示し、政策の全体像と責任の所在を明らかにすることが強く求められます。

 

[意見4]

・該当箇所

21ページ目 最下段に記載の「原子力賠償制度の見直しの総合的な検討」の個所

・意見内容

原子力損害賠償制度の見直しの総合的な検討については、極めて慎重に、国民の安全と利益を最優先に行うべきです。

・理由

審議会報告書は、原子力事業者の賠償責任を有限責任とすべきという意見があったことに言及しています。仮に有限責任とすると、責任限度額を超えた部分について国による補償制度を設け、実質的に国が負担を担うことが想定されています。現行制度において保険料や補償料は電気料金を通じて需要家が負担している仕組みとなっていることから、賠償責任についても最終的な負担が税金や電気料金という形で国民に広く転嫁される可能性があります。

このような状況の下で有限責任化が進められれば、原子力事業者にとって賠償リスクの上限が明確化されることとなり、結果としてリスク負担の一部が社会化されることになります。こうした制度が、事業者の投資判断に影響を与え、結果として原子力発電所の建て替えや新増設を後押しする方向に働く可能性があります。これは国民の安全と利益を後回しとし、事業者の経営の安定を優先するものです。審議会資料においても、有限責任化は安全性向上へのインセンティブの低下やモラルハザードにつながるおそれがあることが指摘されており、このような制度を導入すべきではありません。

原子力損害賠償制度の見直しに当たっては、被害者保護の実効性を確保するとともに、国民負担の在り方や事業者の行動変化に与える影響を含め、制度全体の帰結を丁寧に検証することが不可欠であり、拙速な見直しは決して行うべきではありません。

 

以上