【意見書】《原発関連コストの託送料金への上乗せに反対です 審議プロセスの透明性確保と公正かつ公平な制度設計を求めます》

2016年12月14日

内閣総理大臣
経済産業大臣
消費者担当大臣
消費者委員会委員長 宛

原発関連コストの託送料金への上乗せに反対です 審議プロセスの透明性確保と公正かつ公平な制度設計を求めます

主婦連合会

本年9月に経済産業省に設置された「東京電力改革・1F問題委員会」、また同時期に同省の総合資源エネルギー調査会に設置された「電力システム改革貫徹のための政策小委員会」およびその下のWGにおいて、福島第一原発事故の関連費用およびすべての原子力発電所の廃炉コストを託送料金に上乗せする方向で審議が進んでいます。しかしこれらの委員会での審議プロセスはとても不透明でわかりにくく、国民に理解できないものとなっています。経産省は今月9日、福島原発事故の処理費用は以前の試算から倍増となる21.5兆円と発表しました。しかもこの金額は今後更に増える可能性が大といわれています。

■2020年の規制料金の撤廃後、唯一総括原価方式が残る託送料金へ事故関連費用を転嫁することにより、新電力を含むすべての電力消費者に福島原発事故の関連費用を負担させることに反対です。国会審議を経ずに決めることができる託送料金に、東京電力の起こした事故の後始末の費用を組み込むべきではありません。これまですでに消費者は福島原発事故の関連費用を電力会社の規制電気料金の中で負担してきています。膨れ上がる処理費用が明らかになった今、国民負担を議論する前に、事故に対して責任がある東京電力およびその株主・債権者からの拠出がなされるべきです。
福島第一以外の原子力発電の廃炉費用については、発電事業者の責任で対処し、必要に応じて原子力発電による電気料金に反映させるべきものです。託送料金への上乗せは筋違いであり、反対です。

■ベースロード電源市場の創設などの方法により、実際は安価どころか算定できないほどのコストとリスクを抱える原子力発電を安価であるかのように扱うことで原子力発電への不透明かつ不公正な保護を継続することに反対です。ベースロード電源の新電力への供給を義務付けることにより、本来自由化により選択肢が広がったはずの消費者の選択の自由が制限されようとしています。消費者の選択の権利の侵害です。
公平性、公正性を欠き、電力自由化の意義も根底から覆されてしまう原発救済策は、将来にわたる日本社会の負の遺産となり、よりよき未来へ向かう道筋を狂わせ、将来の社会の姿をゆがめるものです。真の意味での、そして長期の視点での国益、国民益を真摯に議論する姿勢を強く求めます。

以上