【パブコメ】著作権法施行令の一部を改正する政令案への意見

       申し入れ・要望 2022年9月21日

著作権法施行令の一部を改正する政令案への意見

主婦連合会

【意見】
私的録音録画補償金制度の新たな対象機器としてブルーレイディスクレコーダーを規定することに反対です。長年の議論で合意に至ることができていない私的録音録画補償金制度は廃止し、時代に合った対価還元の方策につき、各ステークホルダーが参加した透明な議論の場を設け、検討することを求めます。

【理由】
・関係者間での合意形成を経ておらず、今回の追加指定には正当性がない
私的録音録画補償金制度は、文化庁と経産省(制度導入当時は通産省)との両省合意文書に基づき、対象機器等を政令で追加指定してきた実態があります。(知財高裁による判決でも、両省合意文書の内容が事実認定されています。)また、両省合意文書の前提として、消費者団体や機器メーカー等、補償金の支払いに関わる関係者による合意が不可欠です。しかしながら、今回の政令規定にあたり合意形成がなされていません。文化庁文化審議会著作権分科会の「著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会」での議論でも合意形成が成されず、2019年に小委員会が閉じられ、その後議論そのものが行われてきませんでした。補償金のように、薄くひろく機器代金の一部として消費者が負担する制度には、透明性、公正性が強く求められます。今回、突如として追加指定を行う旨を規定した政令案に至ったプロセスが不透明であり、そのような状態で政令案の意見募集を行うことに正当性がありません。

・テレビ放送にかけられた著作権保護技術(DRM)が考慮されていいない
私的録画補償金制度は、機器のデジタル化によって精度の高い複製が可能になったことを理由として導入されました。導入当時は、アナログ放送(複製制限がない)をデジタルで録画(画質が劣化しない)することが、無制限に可能だったからです。しかしその後、テレビ放送に著作権保護技術が導入され、コピーワンスを経て、2008 年には「ダビング10」ルールが施された地上波デジタル放送が開始され、私的録画には既に制限がかけられています。こうした著作権保護技術のコストはテレビや録画機等の機器価格の一部として消費者が負担しており、更に補償金の支払いを課すことは、消費者の二重負担となります。

・ブルーレイディスクレコーダーの追加指定に合理性が見当たらない
今日、消費者はスマートフォン、タブレット、パソコンなどで、私的複製を介さず過去番組等も配信で観るという利用が急速に普及しています。ブルーレイディスクレコーダー等の機器で番組の録画を行う場合であっても、一時的なタイムシフト利用が大半であり、そのほとんどは視聴後に短期間で消去するという利用方法がとられています。その利用方法が、権利者に不利益を与えているという合理的な根拠が見当たりません。

・文化庁がかつて示していた、今後の補償金制度の廃止の道筋が見えない
2021年10月21日付の文化庁文書において「2-3年での制度廃止」といった方向性が消費者団体に対して示されていたにも関わらず、今回の意見募集にあたり、一切言及がありません。消費者団体に示した「制度廃止」方向性が全く担保されていない状況です。逆に私たちは、将来的に他の機器等やサービスへの対象範囲拡大が生じ得ることを、強く懸念します。
クリエイターへの対価の還元のためには、本来、私的複製への補償金ではなく、そもそものコンテンツ利用時(パッケージ発売時、放送時、配信時など)に、権利者に対してその権利に見合うだけの対価が支払われることが重要です。コンテンツの楽しみ方が大きく変化し続けている今日、それこそが文化庁が取り組むべき施策だと考えます。今回ブルーレイディスクレコーダーを指定したとしても、権利者に十分な対価が支払われるとは考えられません。
制度の廃止とともに今後の展望を示すことを強く求めます。

以上