【要望書】強制視認性が非常に強いジャック型交通広告の自粛を求める要望書

申し入れ・要望2022 年 8 月 25 日

株式会社シトラム  宛

アル法ネット(アルコール健康障害対策基本法推進ネットワーク)
イッキ飲み防止連絡協議会
※上記 2 団体の事務局:特定非営利活動法人ASK
主婦連合会

強制視認性が非常に強いジャック型交通広告の自粛を求める要望書

貴社が実施している、クライナーファイグリングの渋谷駅地下スペースの柱巻きと壁面広告、都営地下鉄でのつり革広告は、「強制視認性」が非常に強いジャック型の交通広告であり、強く自粛を求めます。

【経緯と理由】
私たちは、アルコール関連問題に取り組む学会・職能団体・市民団体・消費者団体などの集まりです。飲酒は長い文化の中で育まれたものですが、アルコールには致酔性(中枢神経抑制)、依存性、発がん性、臓器毒性、神経毒性、胎児毒性などのリスクがあり、多くの病気・周囲を巻き込む事故・暴力事件等の原因になります。そのため、WHO は 2010 年に「アルコールの有害な使用を低減するための世界戦略」を採択、世界の酒類産業もこれに賛同しました。日本でも 2013 年に全会一致で「アルコール健康障害対策基本法」が成立、国の基本計画が策定され、酒類事業者も協力する義務が示されています。
酒類のマーケティングや販売には一定の枠組みが必要なこと、とくにリスクが高い若者や女性に対しては特段の配慮が必要なことを、ぜひともご理解いただきたいのです。

今年 3 月、私たちは貴社の「ウェイウェイらんど2 すごろく付きクライナーファイグリング ASSORT PAC」に対して、酒類中央団体連絡協議会を通じてその危険性を強く指摘しました。貴社においては、趣旨をご理解くださり、増産・再販売はしないとの回答をいただいて、ひとまず安堵しておりました。

ところが 8 月、そのクライナーファイグリングが、今度は渋谷駅の地下スペースを、柱巻きと壁面広告でジャックしているのを目撃し、たいへん驚きました。

また、都営地下鉄のつり革がクライナーファイグリングにされているとの情報もありました。貴社の公式Twitter によると、こちらは 2019 年から行なわれているようです。

    5:30 PM · Dec 5, 2019·TweetDeck

  一般の方の Twitter 投稿より

駅・電車などの交通機関は、不特定多数が利用する極めて公共性が強い場です。乗降客には 20 歳未満の青少年も含まれ、ドクターストップで禁酒・断酒中の人や飲めない体質の人もいます。また、早朝からの通勤・通学や、勤務中の移動時に、酒類広告はなじみません。
中でもスペースジャックは「強制視認性の強さ」が問題視され、酒類業界として自粛に至った経緯があります。「酒類の広告・宣伝及び酒類容器の表示に関する自主基準」の「(3)広告・宣伝の際の留意事項」に、以下の記述があるのはそのためです。

 ヌ 公共交通機関には、次の広告は行わない。
  (イ) 車体広告
  (ロ) 車内独占広告
  (ハ) 自動改札ステッカー広告
  (ニ) 階段へのステッカー広告 (駅改札内を対象)
  (ホ) 柱巻き広告 (駅改札内を対象)

これは、この 5 種類以外ならよいという意味ではありません。
上記に共通しているのは「強制視認性」が非常に強いジャック型の交通広告だということです。
交通広告では次々と新しい手法が生み出されるため、問題事例が発見されるたびに、私たちは該当企業や組合等とやりとりを繰り返しており、その事例は業界全体で共有され、自粛が浸透しつつあります。
今回、貴社が実施している、渋谷駅の地下スペースを柱巻きと壁面広告、都営地下鉄つり革広告は、まさに、「強制視認性」が非常に強いジャック型の交通広告で、酒類の広告として不適切と言わざるを得ません。
なお、貴社のホームページによると、マンガ・アニメとのコラボ企画も行なっているようです。
貴社がターゲットにしている若者・女性は、アルコール健康障害・関連問題のリスクがとりわけ高い層で、国のアルコール健康障害対策推進基本計画でも予防の重点課題に入っています。
また 20 歳以上を前提にしているつもりでも、マンガ・アニメを用いることで 10 代にも訴求する可能性が高いことに留意してください。
以下は、「酒類の広告・宣伝及び酒類容器の表示に関する自主基準」にある文言です。

Ⅱ 広告・宣伝関係。
ニ 20 歳未満の者を広告のモデルに使用しない。
ホ テレビ広告において、25 歳未満の者を広告のモデルに使用しない。また、25 歳以上であっても、25
歳未満に見えるような表現は行なわない。(注)広告出演者の中で、エキストラ等は対象外とする。
ヘ 主として 20 歳未満の者にアピールするキャラクター、タレントを広告のモデルに使用しない。

テレビで広告のモデルは 25 歳以上と規定されているのは、10 代への訴求を抑制する配慮です。
テレビ以外であっても、この配慮をする必要があることを申し添えます。

以上