【 要 請 書 】
2026年10月13日
ビール酒造組合
アル法ネット(アルコール健康障害対策基本法推進ネットワーク)
認定特定非営利活動法人ASK
主婦連合会
公共交通機関における大規模なビール広告の展開についての申し入れ
2026年10月1日の酒税法改正に伴い、首都圏の主要駅や鉄道車両において、ビール各社による大規模な交通広告が一斉に展開されました。
一般市民からASKに寄せられた通報、ASKスタッフによる現地調査(10月9日~11日)、SNS投稿の調査などを通じて、東京駅、品川駅、上野駅、池袋駅、渋谷駅、新宿駅、秋葉原駅、阪急梅田駅などの主要駅をはじめ、山手線や京浜東北線、大阪メトロ御堂筋線などの鉄道車両内で、ビール広告が集中的に掲出されている状況を確認しました。
駅のコンコースでは、天井から吊り下げられた大型フラッグ広告、柱を利用した大型広告、デジタルサイネージなどが連続して展開され、空間全体がビール広告に覆われたような状況が生まれていました。
東京駅では、在来線から東海道新幹線へ向かう乗り換え通路に、複数メーカーの大型広告が通路に沿って次々と現れ、品川駅では中央改札付近から港南口への自由通路にかけてビール広告が連続して掲出されていました。上野駅のグランドコンコースでも巨大な広告が目立ち、池袋駅では天井から大型フラッグ広告が吊り下げられ、柱型デジタルサイネージとともに駅空間を覆っていました。渋谷駅の地下コンコースでは、壁面を利用した大型広告や柱型デジタルサイネージが連続して展開されていました。
首都圏だけではありません。大阪の阪急梅田駅でも、中央改札外コンコースにおいて、円柱を利用した大型広告とデジタルサイネージが組み合わされ、駅空間を大きく占めていました。
さらに山手線などの車両内で、アサヒ、キリン、サッポロ、サントリーの大手4社の広告が同車両に掲出されている事例も確認されています。大阪メトロ御堂筋線でも複数メーカーの広告が確認されています。
各社がそれぞれ広告を出稿した結果であったとしても、利用者から見れば、駅構内から車両内まで、至るところでビール広告を目にする異常な状況です。交通機関という公共性の高い空間が、これほど大規模に酒類の広告で占められることは、看過できません。
アル法ネットでは、2020年11月13日、貴組合に対し、「交通広告の全面自粛を含む抜本的な対策を求める要望書」を提出しました。
そこでは、交通広告の持つ「強制視認性」「反復接触性」を指摘し、フラッグ広告やデジタルサイネージの連続使用など、既存の自主基準では対応できない広告手法の問題性を具体的に示しました。それらの手法が今回大々的に使われています。
駅や電車は、通勤・通学など日常生活に欠かせない公共交通機関です。利用者には20歳未満の子どもや若者、そもそも飲酒しない人、健康上の理由で飲酒を控えている人、断酒を継続している人など、さまざまな立場の人がいます。交通広告は、見たくない人も避けることが難しいという特徴を持っています。酒類広告への意図しない接触を、繰り返し強いられること自体が、問題なのです。
こうした問題を踏まえ、2026 年3 月に策定された「第3期アルコール健康障害対策推進基本計画」では、「不適切な飲酒の誘引の防止」の広告の項目に、次の記述が盛り込まれました。
〇酒類業界は、不適切な飲酒を誘引することのないよう、広告・宣伝に関する自主基準について、業界内での周知徹底を図り、遵守を継続するとともに、酒類の交通広告については、特段の配慮を行い、状況に応じて自主基準の見直しを行う。(後略) 【国税庁】
基本計画の策定にあたったアルコール健康障害対策関係者会議には、貴組合専務理事も委員として討議に加わっています。その基本計画の策定からわずか半年余りで、今回のような大規模な交通広告が展開されたことを、私たちは非常に重く受け止めています。
現在の自主基準では、(イ) 車体広告 (ロ) 車内独占広告 (ハ) 自動改札ステッカー広告 (ニ) 階段へのステッカー広告 (駅改札内を対象) (ホ) 柱巻き広告 (駅改札内を対象) の5 種類を行わないこととしています。しかし、今回確認された広告には、これらの禁止項目に該当する可能性があるものに加え、大型フラッグ、柱を利用したデジタル広告、連続する大型ビジョンなど、従来の自主基準では十分に対応できない手法が多数見られます。
また、個々のメーカーの広告が自主基準に抵触しないとしても、複数社の広告が同時期に集中した結果、駅や車両の空間全体が酒類広告に占められるのであれば、その影響を考慮する必要があります。
アルコール健康障害対策基本法第6 条は、酒類事業者に対し、国及び地方公共団体が実施するアルコール健康障害対策に協力するとともに、アルコール健康障害の発生、進行及び再発の防止への配慮を求めています。
私たちは、広告手法ごとの形式的な適否だけではなく、公共交通機関の利用者が実際にどのような広告環境に置かれるのかという観点から、酒類の交通広告のあり方を根本的に見直すべきだと考えます。
つきましては、以下の事項を申し入れます。
記
- 今回の酒税改正に伴う交通広告の展開について、各社の掲出状況を把握し、特に駅構内や車両内で複数社の広告が集中した実態を検証すること。
- 今回確認された大型フラッグ広告、柱を利用した広告、デジタルサイネージの連続使用などについて、現行の自主基準との関係を明らかにするとともに、第3 期基本計画が求める「特段の配慮」がどのように行なわれたのか説明すること。
- 個別の広告媒体の形式だけでなく、駅や車両の空間全体における酒類広告の占有状況、強制視認性、反復接触性を考慮した自主基準の見直しを行なうこと。
- 公共交通機関の公共性と酒類の特殊性を踏まえ、交通広告の全面自粛を含む抜本的な対策を検討すること。
以上について、貴組合としての見解と今後の対応方針を、文書にてASK までご回答くださいますようお願いいたします。
以上
別添:2026 年10 月、主要駅・鉄道車両におけるビール広告の掲出状況(写真資料)
以上
