【意見書】《特定商取引法・預託法の改正法案における 書面交付義務の電子化を認める条文案の削除を求めます》

申し入れ・要望2021年4月9日

内閣総理大臣
内閣府特命担当大臣(消費者及び食品安全)
消費者庁長官
消費者委員会
衆議員議長
参議院議長
自由民主党
立憲民主党
公明党
日本共産党
日本維新の会
国民民主党
社会民主党
れいわ新選組 宛

主婦連合会

特定商取引法・預託法の改正法案における
書面交付義務の電子化を認める条文案の削除を求めます

 政府は、本年3月5日、詐欺的定期購入被害、送り付け商法被害、販売預託商法被害を防止する特定商取引法・預託法の改正法案を国会に提出しました。同法案の中核を成すのは、ジャパンライフ等の大規模消費者被害をもたらす販売預託を原則として禁止するとともに、お試し定期購入や送り付け商法等への規制を強化するための条文案であり、消費者保護に資するものとして主婦連合会はその内容に賛成し、それらの条文に関しては早期の確実な成立を望むものです。

 一方、この改正法案には、特定商取引法の取引類型および預託取引について消費者の承諾があれば契約書面の交付に代えて電子メールなどで送信すればよいという「書面交付義務の電子化」を認める改正案部分が盛り込まれています。

 事前に消費者の承諾を得るから消費者に不利益をもたらさないという考えは、特定商取引法や預託法における消費者の実態を全く無視するものと言わざるを得ません。

 訪問販売や連鎖販売取引(マルチ商法)、預託商法などは、不当な勧誘行為により消費者が不本意な契約を結ぶおそれが強いために、法律で書面交付義務やクーリング・オフを定めています。問題のある勧誘行為のもとで交わされた契約においては、消費者が契約内容を十分に理解し承諾したとは言えず、同時にそうした状況下では、電子データの提供についても納得・承諾したと評価することはできないはずです。不利な契約内容やクーリング・オフの存在を知らないままに、「メールで送りますよ」と言われて「はい」と答えたことが「承諾した」とされるならば、被害を拡大・深刻化することにもなりかねません。デジタル技術に不慣れな高齢者や、SNSなどのつながりの中で安易に契約してしまう若年者など、消費者の弱みにつけ込んだ消費者トラブルの発生が懸念されます。また、高齢者などの取引被害は、家族や見守りを行う者など、第三者が契約書面を見つけることによって発見されることも多く、書面の電子化は、契約の存在を見えなくし、消費者被害の発見が困難となる怖れもあります。

 昨年3月31日に議決定された第4期消費者基本計画には、消費者の安全・安心を確保し、ぜい弱さを抱える消費者を被害から守るなど、誰一人取り残さない社会的包摂の実現を掲げています。政府をあげてのデジタル化の推進は、市民を幸福にするものであればこその政策であり、間違っても、デジタル化政策が消費者被害を助長するものであってはなりません。

 以上のことから、特定商取引法・預託法改正法案のうち、書面交付義務の電子化については、悪質商法による消費者被害を防止・救済するための書面交付義務とクーリング・オフの意義が損なわれることのないよう、改正案からの削除を強く求めます。 

         
以上